感動するマーケティング

人通りがない場所に人は集まらない。『ビール女子』から学ぶコミュニティ・マーケティングの流儀

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こんにちは!SNSやコミュニティなどを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 ( @kei4ide ) です。

 

モノを消費したり、所有することの価値より、共通の価値観で通じ合える仲間と出会える楽しさや、その仲間との豊かな時間に価値を感じる人が増えつつある現在、様々な分野・業界で『コミュニティ・マーケティング』が注目されています。

 

そこで、現在、コミュニティマネージャーとして活躍されている方々からお話を伺い、コミュニティを運用する際の考え方や、コミュニティがもたらす価値について学ぶ『コミュニティ・マーケティングの流儀』というシリーズを「感動するマーケティング」で立ち上げることにしました!

 

今回お話を伺ったのは、ビール好きの女性から熱い支持を集めているWebメディア&コミュニティの『ビール女子』を運営している株式会社京橋ファクトリーの執行役員 CMOの前田裕司さんです。

 

 

メディア戦国時代と呼ばれている現代において、メディアの在り方を考える上でのヒント。また、自社ブランドを応援してくれるファン(アンバサダー)を育てるためのファンコミュニティを立ち上げる際のヒントを『ビール女子』の取り組みから得ていただけると幸いです。

 

もっと多くの人がビールを楽しむ世界を目指して!

まず、はじめに『ビール女子』について簡単に紹介させてください。『ビール女子』とは、端的にいうと、ビール好きな女性のために、ビールを楽しむための知識やイベント情報、ビールと合うおつまみレシピ、各メーカーの新商品情報など、ビールライフをより楽しくさせてくれるWebメディアです。

 

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※『ビール女子 媒体資料 2017年10月~12月 ver1.3』よりスクリーンショット

 

主な読者層としては、食やお酒に関心が高く、趣味などにお金を多く使う20~30代女性が多く、現在、月間のサイトへの訪問者(UU数)は約25万人とのことです(2017年6月20日時点)。男性が読んでも、ビール好きであれば楽しめる情報が満載なので、クラフトビール好きの僕もコンスタントに『ビール女子』をのぞき見していたりします。

 

また、『ビール女子』は、読んで楽しむWebメディアにとどまらず、『ビール女子LAB』というコミュニティも運営しています。『ビール女子』の熱心な読者で、なおかつビールの楽しさや魅力を広めることに貢献したいという想いをもっている方々がメンバーとして参加していて、ビールに関する座談会やリサーチに協力いただくコミュニティとなっています。現在、メンバー数は250名ほどいらっしゃるようで、メンバーが自発的にLINEやFacebookでメンバー同士を繋ぐグループを立ち上げるなど、メンバー間の横のつながりが強いコミュニティになっているそうです。

 

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※『ビール女子 媒体資料 2017年10月~12月 ver1.3』よりスクリーンショット

 

この『ビール女子LAB』をはじめ、LINE@やメルマガ会員、各種SNSのフォロワーなど、ビール好きの女性同士の「強いつながり」を『ビール女子』は形成することに成功しているんですね。

 

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※ビール女子LABのイベントの様子(『ビール女子LAB』のWebページよりスクリーンショット)。ビール好き同士がビールを楽しむ会ということもあってか、めちゃくちゃ盛り上がっている雰囲気が写真から伝わってきます!

 

様々な大手企業が『ビール女子』と一緒にコミュニティを開設!

従来、Webメディアのマネタイズ手法というと、サイト内広告やネイティブアド、もしくは有料課金サービスといったことが主流だと思います。その結果、PV数やUU数、もしくは有料課金会員数をいかに高めるのかということを各Webメディアは懸命に追うわけですね。

 

しかし、『ビール女子』では、このような従来のマネタイズ手法に頼らず、『ビール女子』の読者の方々との“強いつながり”を最大の価値にしていて、このつながりに魅力を感じた企業と様々な取り組みを行っています。僕が、とても面白いと思ったのは、『ビール女子』の読者の方々と一緒に、特定のビールブランドの魅力を広めるコミュニティ活動です。

 

例えば、『ビール女子』では、サッポロビールさんのネットオリジナル商品である『空模様』の魅力を広めることをミッションとした「ソラリスタLAB.」というコミュニティを運営しています。

 

 

これは、『ビール女子』の読者の方からメンバーを募集し、『空模様』を試飲したり、企業のブランド担当者さんや醸造家の方からビールに込めた想いを聞いたうえで、『空模様』を好きになり、本気で応援しようと思ったメンバーが、「ソラリスタ」と名乗り、『空模様』の魅力を広めていくために様々な活動をしていくコミュニティです。例えば…

  • 『空模様』に合うおつまみは何が良いのか?
  • 『空模様』を大切な友人や家族に贈るときに、どのようにラッピングをして渡すのが良いか?
  • 『空模様』のオリジナルグッズとして、何があると良いか?

このようなテーマについてソラリスタ達が様々な意見を出し合ったり、実際にレシピやグッズを作ってみたりして、企業にフィードバックを与えていくプロジェクトや、SNSに『空模様』に関する投稿を行ったり、友人や知人に推奨をしていくアンバサダー活動を行っています。

 

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※「空模様のグッズを作ろう!」オフ会の様子(「ソラリスタLAB.」のWebページよりスクリーンショット)。ソラリスタの皆さんの、真剣な時と、楽しんでいる時のメリハリがスゴいです。

 

人通りの少ない場所に店を立てても、お客さんは集まらない。

現在、自社ブランドを積極的に推奨してくれるアンバサダーを育てようとファンコミュニティやアンバサダープログラムを検討する企業が増えてきました。

 

ただ、ブランドの魅力を広げていくためには、単純にブランドのことが好きというだけでなく、「自分が好きなビールを、他の人にも味わってもらいたい」といった『貢献欲求』の高さや、「この人がおススメするなら、飲んでみよう」と周囲から思われる『信用』 (もしくは影響力)のある方にアンバサダーになっていただくことが重要です。

 

そうすると、そういった貢献欲求と信用が高い方々が集まっているコミュニティと組んで、自社コミュニティを立ち上げたほうが絶対に効果的だし、効率的ですよね。

 

『ビール女子』であれば、ビールの楽しさや魅力を広めることに貢献したいという想いをもっているメンバーの方々が『ビール女子LAB』をはじめ顕在化しているので、貢献欲求が高い方々をコミュニティに招待できるわけです。また、ビール女子として普段からビールを楽しんでいる方々が多いので、周囲からのビールに対する信用が高い方も集まりやすいわけです。つまり、『貢献欲求』と『信用』の2つを兼ね揃えた理想的なアンバサダー候補の方々にアプローチできる場所として『ビール女子』は最適なんですね。ビールメーカーをはじめ、様々な企業から声がかかる理由が、コレです。

 

「人通りがない場所にお店を立ち上げても、その店にはお客さんは来ないですよね。コミュニティもそれと一緒です」と前田さんがおっしゃっていて、その通りだと思いました。

 

従来、このようなコミュニティを企業が立ち上げる場合、大抵の企業は独力でコミュニティを立ち上げようとするんですよね。自社のSNSアカウントのフォロワーや、メルマガ会員、EC会員などに対してメンバー募集をかけて、コミュニティに人を集めようとします。もちろん、自社でコンタクトができる方々の中に、貢献欲求も高くて、周囲からの信用も高い方がいらっしゃることもあるかと思いますが、そうでないことも多々あります(むしろ、経験上こっちのほうが多いです)。

 

であれば、既にアンバサダー候補として該当する人が多い存在している『ビール女子』のようなコミュニティでメンバー募集をかけたほうが圧倒的に成功確率が高いですよね。なので、コミュニティに人を集める時には、本当に自社単独で良い人が集められそうかを検討いただいたほうが良いかと思います。

 

企業側の熱量を直接伝えていただくことを徹底

そして、忘れてはいけないのは『ビール女子』ができるのは、アンバサダー候補になりえる貢献欲求と信用をもった方々を集めるところまでで、肝心の「そのブランドを応援したい」という気持ちをつくることは、メーカー側の重要ミッションになります。

 

そのため、『ビール女子』と組んでコミュニティ活動を実施する際には、必ずコミュニティのキックオフで、メーカーの担当者自身にブランドに込めた熱い想いをメンバーの方々に直接伝えていただくことを徹底しているとのことです。そして、実際に商品を試飲したり、企業側の想いを組んだうえで、「そのブランドを本当に応援したい」という気持ちを持っていただいた方のみ、コミュニティメンバーとして活動して頂くようにしているそうです。

 

僕の経験上、メーカー企業の場合、お客様の前で話したがらない方が多い印象があったので、「上記のような依頼はメーカーの担当者が承知しづらいのではないですか?」と前田さんに聞いたところ、そこは絶対に曲げないポリシーにしているそうで、「ブランドを応援してもらうためにコミュニティ活動を検討しているのであれば、そこは絶対にブランド担当者が直接語るべき!」と説得されているようで、完全に頭が下がる思いでした。

 

まとめ

ということで、『ビール女子』の取り組みを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

 

メディアビジネスにおいて、PVやUUといった規模での勝負は消耗戦になってくると思っていて、『ビール女子』のようにコミュニティ要素を取り入れ、読者との「つながり」を価値にしていくべきだと僕は思っています。特にカテゴリーメディアと呼ばれる、趣味嗜好でテーマを絞っているメディアほど、読者の方々の横のつながりを求める気持ちや、「自分が好きなモノやコトを世の中にもっと広げていきたい」という気持ちは強いと思うので、コミュニティ要素はハマると思うんですよね。

 

また、企業側でファンコミュニティ、もしくはアンバサダープログラムを立ち上げようと思っている方に対しては、『人通りの少ない場所で、コミュニティを立ち上げてはいけない!』ということと、『ブランドを応援してもらえるように、企業側の熱量をメンバーに直接伝える』ことの重要性を理解いただけたら嬉しく思います。

 

最後に、前田さん、お話しを聞かせてくれてありがとうございました!! 

『ビール女子』の取り組みが、皆さんのコミュニティの企画や運営にとってプラスになれば幸いです。

今回の「コミュニティ・マーケティングの流儀」は以上となります!