感動するマーケティング

マーケティングってオモシロいし、世界を感動させることもできる。世の中のアレコレをマーケター観点で切り取ってみるブログ

『グレイトフル・デッド』と『ヤッホーブルーイング』が教えてくれたマーケティングのあるべき姿。

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こんにちは!様々な業界の企業様を対象に「顧客から愛されるブランド」になるための戦略策定やマーケティング施策のお手伝いをしている井手と申します。

 

熱狂的に愛される製品や体験を作り、顧客も、社員も、ブランドに関わる全ての人たちの人生をハッピーに彩る。そんなブランドのことを“熱狂ブランド”と呼び、熱狂ブランドを提供している会社を“熱狂カンパニー”と呼んでいるのですが、熱狂カンパニーとして、心底尊敬してやまないのが、「よなよなエール」、「水曜日のネコ」などのクラフトビールでお馴染みの『ヤッホーブルーイング』(以下、ヤッホー)です。

 

ご存知の方も多いと思いますが、「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションを掲げ、バラエティのある美味しいビールを提供することにとどまらず、顧客の人生をより楽しく、豊かなものにするために様々な取り組みを行い、「いつかはノーベル平和賞をとりたい!」とまで豪語しているチャレンジング、かつ最高にオモシロイ会社です。

 

僕もヤッホーが主催するイベントに参加したり、メルマガ会員やSNSアカウントのフォロワーになっているのですが、様々な社員の方が、芸人のような仮装をしたり、ビールへのこだわりを熱く語ったり、クスっと笑えるシュールなコンテンツを届けてくれたりと、あの手この手で、お客様に喜んでいただくために全力を尽くしている姿を見て、いつも感心してしまいます。しかも、皆さん、とても楽しそうに取り組まれているんですよね。

 

「ヤッホーのような会社が社会に増えていけば、もっと世界は幸せになるはずだし、仕事も楽しいものに変わるはず!」と、マーケターとして志すうちに、「世の中に、ヤッホーのような熱狂的なファンを創りながら、自分たちも最高に楽しんでいる会社は他にないのだろうか?」と考えるようになりました。そういう会社を発見して、共通する要素を洗い出し、様々な業種・規模の企業に応用できる秘訣のようなものを得られないかと思ったんですね。

 

こうして、様々な企業の事例を見ていく中で、『ザッポス(Zappos)』だとか、『ホールフーズ(Whole Foods Market)』だとか、以前にブログで紹介した『メトロバンク(METRO BANK)』『伊那食品工業』などがヤッホーに近いのかなと思いましたが、最近、「もしかしたら、これがヤッホーに一番近いんじゃないのか…!?」と思う存在を発見しました。

 

その存在とは、伝説のロックバンド『グレイトフル・デッド(Grateful Dead)』です。

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 ※Wikipedia「グレイトフル・デッド」より

 

『グレイトフル・デッド』はアメリカで1960年代に生まれたバンドで、ビートルズやローリング・ストーンズと同じくらいアメリカでは人気や歴史があるそうなのですが、おそらく大半の日本人は、名前くらいは聞いたことがあるけど、それ以上は知らないのではないでしょうか(僕もそうでした)。グレイトフル・デッドはヒットチャートとは、ほとんど無縁の存在ながら、毎年のようにスタジアム・ツアーを行っていて、常にアメリカ国内のコンサートの年間収益では一、二を争う存在だそうで、あのスティーブ・ジョブズも熱狂的なファンだったそうです。

 

「あれ。会社じゃなくて、バンド?」というツッコミもあるかと思いますが、糸井重里さんが監修するなどして話題になったグレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶを読んだりしながら、グレイトフル・デッドの取り組みを知れば知るほど、グレイトフル・デッドとヤッホーは非常に似ていることが分かってきたんです。

 

例えば、ヤッホーは自分たちのことを“知的な変わりもの集団”と呼んでいて、世の中の知的な変わりもの達をブランドのコアターゲットに掲げていますが、グレイトフル・デッドこそカウンターカルチャー全盛期のころからの“知的な変わり者集団”であり、アメリカの、いや世界中の知的な変わりもの達を魅了し続け伝説となったバンドです。「これは、もうグレイトフル・デッドを掘り下げるしかない!」と僕は強く確信しました。

 

ということで、今回のブログでは、グレイトフル・デッドとヤッホーブルーイングという「知的な変わりもの」たちから、熱狂的なファンを創りながら、自分たち自身も最高に楽しむことのできるブランドを創るための「ヒント」を探っていきたいと思います。

 

☑グレイトフル・デッドとは「人生そのもの」

 

グレイトフル・デッドは、1965年から、バンドのリーダーであったジェリー・ガルシアが亡くなる95年までの間に、2300以上のライブを行いました。13枚以上発売したスタジオ録音のアルバムも売れたそうですが、バンドを別格の存在にしたいのが、独自の“ライブ体験”です。

 

派手な演出もなく、あっさりとライブが始まることや、ビルボードのヒットチャートにのっている曲がないこと、温かいコミュニティの雰囲気、そして何千人もが吸うマリファナの濃い煙など、すべてが独特で、何もかもが変わっているにも関わらず、奇妙な心地よさを感じ、その虜になってしまう人が続出したそうです。

 

グレイトフル・デッドのファンは「デッドヘッズ」と呼ばれています。ヒッピーのような自由人がデッドヘッズには多いと思っていましたが、大部分は、普段は名門大学に通っていたり、大企業で真面目に勤務している方々のようです。 そんなデッドヘッズにとってライブは、いつもの日常を抜け出して、自分を表現し、自由に楽しむことを許してくれる場であり、自分と考え方の似た仲間たちが集まる居心地の良い場所になっているそうです。

 

デッドヘッズは、もちろん、グレイトフル・デッドの音楽が大好きです。けれども、デッドヘッズにとってファン同士のコミュニティは、好きな音楽と共通の価値観を共有する仲間の集まりということで、音楽以上の意味があるようです。「ライブは、古くからの仲間であるデッドヘッズたちとの友情をあたためる場であり、新しいデッドヘッズたちとの出会いの場なんだ。グレイトフル・デッドは素晴らしい音楽と仲間が集まる場所を提供してくれる最高のバンドだよ!」。こんなコメントをするファンが少なくない規模で存在しているらしいんですね。

 

これって、スゴいことだと思いませんか!?ミュージシャンという枠を飛び越え、「人生そのもの」を彩る存在になっているというか…。グレイトフル・デッドのライブに行くと、顔なじみのデッドヘッズと再会して、演奏前や休憩時間にビールを飲みながら、それぞれの近況を報告しあう。まさに、「グレイトフル・デッドなしでは語れない人生」です。

 

そして、このような”共同体感覚”は、偶然の産物ではなくて、グレイトフル・デッドのメンバー達が意識的に創り上げていったようです(もちろん、熱狂的なデッドヘッズ達によってメンバーたちの想像を超えて、拡張&進化していったのではないかと思いますが)。例えば、ファン同士が交流する際の話のネタをつくるということで、1970年初頭からバンドの近況などを掲載した手の込んだ会報を定期的にファンの自宅に送ったり、ライブの録音を許可することで、録音テープの交換がファンの交流のきっかけになったりと、ファン同士のつながりや仲間意識が濃くなっていくような仕掛けを次々と実行していきました。「デッドヘッズ」というファンの呼び名も、ファン同士の共同体感覚を強める大きな後押しになっているのは間違いありません。

 

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※書籍 『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』よりグレイトフル・デッドのライブを楽しむデッドヘッズたちの写真を抜粋(著者撮影)

 

☑「宴」はヤッホーファンにとっての“同窓会”

 

さて、一方のヤッホーブルーイングです。ヤッホーの魅力の源泉は、もちろん、個性的な味わいのある美味しいエールビールです。看板商品の「よなよなエール」は世界三大ビール品評会の金賞やモンドセレクション最高金賞を何年も連続して受賞するなど、世界的に評価されています。また、「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY」というシリーズをはじめ、ビールの持つ可能性の広がりを感じてしまう美味しくて面白いビールを毎年毎シーズン届けてくれて、ヤッホーのおかげで、ビールライフが楽しく豊かなものになっているのは間違いありません。

 

ただ、ヤッホーファンにとってヤッホーを別格の存在に導いているのは、「宴」をはじめとした“ファンイベント”だと僕は確信しています。「宴」というのは、ヤッホーの様々なビールや、ビールと相性がよくて、美味しい料理を楽しむことのできる「よなよなビアワークス」というお店(本当におススメ。特に、ローストチキンは絶品)を会場に、80名程度のヤッホーファンを集めて定期的に開催するヤッホー主催のファンイベントで、ヤッホー社員の皆さんも毎回多数参加されています。

 

今でも、初めて、宴に参加した時のことを覚えています。宴の最大の魅力。それは、「よなよなビアワークス」のビールや料理の食べ放題だと当初は思っていました。好きなヤッホーのビールをたくさん飲めて、あのローストチキンや旨いソーセージを食べまくる…、確かに、考えただけで胸熱です。しかし、そうではなかったんです(もちろん、食べ放題も大きな魅力ですが)。

 

まず、宴の会場に入ると、ヤッホーの社員さんからニックネームをシールに書いて、胸に貼ることを推奨されます。ヤッホー社員はお互いをニックネームで呼び合う文化なので、宴でもそれを踏襲したいと。そして、宴が始まるのですが、ここからがビックリ。参加者は6名がけくらいのテーブルにそれぞれ座るんですが、そのテーブル内での交流が、まずスゴい!ヤッホー社員の司会の方から、テーブル内で自己紹介をするように促されるのですが、ヤッホーのビール好きという共通の趣味嗜好を持っているからなのか、ニックネームの効果なのか、アルコールの力なのか、初対面とは思えないくらい、会話がとても弾むんですね。「何年ぐらい前からヤッホー飲んでます?」、「この間、発売されたあのビール飲みました?」、「今度やるヤッホーのイベント行きますか?」…とか、こんな具合にネタが尽きないんです。しかも、途中からヤッホーの社員さんも加わってくれて、会話がどんどん盛り上がっていくんです。

 

そして、会が始まってから一時間くらい経つと、はじめに座っていたテーブル以外の方とも交流するようになってきて、顔に「よなよな」のシールを張ることを強烈に薦めてくるチャーミングなおじさんだとか、ヤッホーが好きすぎて、自分でオリジナルグッズを作ってきているデザイナーの方(ちなみに、めちゃくちゃクオリティが高い)など、面白くて個性的な方々と、次々と遭遇するようになるんです。そして、場が盛りがってきたタイミングで行わる終盤の「よなよなウルトラクイズ」!これが、また盛り上がるんです!…と、こんな具合のイベントなのですが、会が終了して帰るころには、初めて会ったヤッホーファンやヤッホー社員の方々とFacebookの連絡先を交換していたり、「また、宴で会いましょう!」なんて言って、別れたりするんですね

 

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※「宴」のイベントの様子(参照元:「ただの飲み会にあらず!年間契約イベントレポート ~宴 feat. 年間契約~」よなよなの里 エールビール醸造所 公式通販サイトより) 

 

10年以上も前からヤッホーを応援している大ベテランのヤッホーファンの方がおっしゃっていた言葉がとても印象に残っているのですが、「宴」などのヤッホー主催のイベントは“同窓会”みたいなもので、参加すると、気心の知れたヤッホー社員の方々はもちろん、これまでのイベントで知り合ったファンの方々と再会できるのが最高に楽しいし、そういう人たちとヤッホーのビールを飲みかわしながら、楽しい時間を過ごせるのが嬉しいとおっしゃっていたんですね。これ、すごい良くわかります!僕もヤッホーのイベントに参加するたびに魅力的な人との出会いがあって、この同窓会って表現はピッタリだなと思いました。

 

そして、イベントで知り合った社員さんが、その後、ヤッホーのメルマガやWebサイト、SNSなどで登場したりすると、「おっ、頑張ってるな。応援しなきゃ」みたいな感じで、友達が活躍していて嬉しいような感覚になったり、SNSで繋がっているファンの方々がヤッホーに関する投稿をしたりすると、“いいね”やコメントをしあったりしていて、気がつくとヤッホーが生活の一部になっているんですね。「ビールに味を!人生に幸せを!」というミッションをヤッホーは掲げていますが、まさにヤッホーのおかげで、僕の人生が豊かになったのは間違いないですし、同じようなことを思っているヤッホーファンはたくさん存在していると思います。もう、ここまでくるとファンにとってヤッホーの存在は、明らかにクラフトビールメーカーという域を超えているわけです

 

☑“共同体感覚”をいかに創りだすか

 

ここまで読んでいただくと、グレイトフル・デッドとヤッホーが行っていることが、近いといった意味がご理解いただけたのではないでしょうか? ブランドの魅力が体現される場(グレイトフル・デッドであれば“ライブ”。ヤッホーであれば“宴”)を創り、個性的なブランドに惹かれて集まってくるファン同士をユニークなやり方でつなげ、その結果、ファンの中に強烈なブランドへの、またファン同士の“共同体感覚”を創りだす。両者とも、これが実現できているんです。

 

そして、このファンが抱いている“共同体感覚”は、ブランドが提供する体験価値を確実に引き上げていると思います。デッドヘッズたちは、初めてグレイトフル・デッドのライブに訪れたファンに対して、グレイトフル・デッドを愛する仲間として、素晴らしい時間を味わってもらえるように、自分流のライブの楽しみ方を伝授したり、お気に入りのマリファナをシェアしたりと、フレンドリーでオープンな人が多かったそうです。僕が知っているヤッホーファンの方々も、初めて宴に参加した方に楽しんでもらいたいという想いから、テーブルのトークを積極的に盛り上げたり、ヤッホーの魅力を一生懸命語っていたり、人によっては、酔っぱらいすぎてしまった方の介抱や、後片付けのお手伝いを申し出るなど、まるで社員のような動きをしている方もいらっしゃいます。

 

このように、熱狂的なファンがブランド体験価値を高め、その結果、新しい熱狂的なファンが増えていく。そんな素敵なサイクルが回っているんですね。そして、このようなブランドを応援してくる熱狂的なファンの方々の姿は、ヤッホー社員の皆さんのモチベーションを大いに高めてくれることは、間違いないでしょう。

 

熱狂的なファンを創りながら、自分たち自身も最高に楽しむことのできるブランドを創るために必要なコト。それは、いかにファンとブランドの、そして、ファン同士の“共同体感覚”を創出できるかだと僕は思います。

 

「どうやってファンと通じ合うか?」

「ファン同士が仲間意識を持てるような、”共通の価値観”とは何か?」

「ファン同士の”交流を促すキッカケ”をいかにつくるか?」

「ファンとブランド、ファン同士が”一体感を持つことを後押しができる施策”の展開はできないか?」

 

このような問いに対する答えを考え、顧客も、社員も、ブランドに関わる全ての人たちの人生をハッピーに彩る熱狂ブランドを増やしていきたいと思います。皆さんも、是非、自社のブランドに当てはめて、考えてみていただけると幸いです!

 

 

…さて、最後に、グレイトフル・デッドは前述のとおり、愛すべきデッドヘッズたちとともに、ロックの音楽史で伝説となっているバンドです。僕は、ヤッホーも、「ビールに味を!人生に幸せを!」という旗印のもと、最高に面白くて個性的で愉快なヤッホーファンたちと共に、きっとグレイトフル・デッドのような伝説のブランドとなってくれるのではないかと期待してやみません。

 

ヤッホーファンにとって聖地と呼ばれている「超宴」というイベントがあります。これは軽井沢のキャンプ場で行われる一泊二日のファンイベントで1,000人規模の人数が集まります。このイベントは、すでに伝説となっていて、ヤッホー社員も、ヤッホーファンも、はじめてヤッホーのイベントに参加した人も含めて、皆で最高の空間を創り上げている最高のイベントになっています。

 

そして、この秋、2017年10月7日(土)。なんと、この超宴が、神宮外苑軟式球場で初めて開催されます!!!公式サイトには、以下のようにイベントを紹介していました。

 

「よなよなエールの超宴」とは、よなよなエールファンとヤッホーブルーイングスタッフで創り上げるBIGなファンイベント。

よなよなエールを通した、新しい出逢いや発見がつまった超!HAPPYな宴です。

 

 

生産者と消費者という垣根を越えて、ヤッホーブルーイングというブランドのもと、一緒になって盛り上がる。その体験を味わうことのできるビッグチャンスです!ビール好きな方はもちろん、志のあるマーケターの方は、足を運ぶことを激しくお奨めします!!!そして、是非、会場で一緒に乾杯をしましょう!

▼超宴の素晴らしい空間を感じることができるオフィシャル動画があるので、是非、見てみてください!


よなよなエールの超宴 in 新緑の北軽井沢2017 after movie

 

 

≪参考図書≫