感動するマーケティング

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ファンベースマーケティングの実践において、「クラウドファンディング」を選択肢に入れるべき理由

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こんにちは!様々な業界の企業様に対し「顧客から愛されるブランドづくり」を目指して、PR・SNS・コミュニティなどを通じた”ファンづくり”支援に奮闘しております井手です。

 

マスマーケティングで生活者の興味関心を獲得することが難しくなってきている現在において、ブランドのファンを大切にし、ファンと共にブランド価値を共創したり、ファンを通じてブランドの魅力を伝えるなど、ファンを中心にマーケティングコミュニケーションを展開していく「ファンベースマーケティング」という考え方が広まっているのは、みなさん、ご存知かと思います。

 

「自社のファンを増やしたい!」

「積極的に推奨してくれるアンバサダーを増やしたい!」

マーケターであれば、誰もが思っていることでしょう。

 

そこで、様々な業界のファンづくりの事例をみてきた僕としては、ファンベースマーケティングを実行するに当たり、この3つの流れが重要であると確信しています。

 

  1. ソーシャルメディアを活用し、”ファン”をつくる
  2. ファンの中で共感度が高い方を、コミュニティに招き、”協力者”をつくる
  3. ファンや協力者にクラウドファンディングを通じて支援してもらい、”仲間”をつくる

 

このなかで、今回、フォーカスしたいポイントは③のクラウドファンディングです!

 

ソーシャルメディアやコミュニティを活用したブランドコミュニケーションは知っているけど、「企業のマーケティングでクラウドファンディングを活用するって何それ?」と思われた方もいるかもしれません。「クラウドファンディングって、個人事業主やNPOなどが資金を集める際の手段じゃないのか?」と。

 

しかし、僕は、企業も積極的にクラウドファンディングという仕組みを活用すべきだと思っています。なぜなら、キングコングの西野さんの話やCAMPFIRE代表の家入さんの新刊「なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。」などを読んで、僕が解釈したクラウドファンディングの本質とは、資金を調達することではなく、“仲間をつくる”ことだからです。

 

ファンベースマーケティングの実践において、なぜ企業がクラウドファンディングを選択肢に入れるべきなのか?今回のブログでは、そのことについて説明していきます。

 

50円玉を50円で売る意味

 

まずは、クラウドファンディングの本質について、話をしたいと思います。

 

家入さんの本で、とても興味深いエピソードが紹介されていて、大阪の路上で50円玉を50円で売っているホームレスの方がいるそうなんです。お金の額面の価値だけで考えると、この行動の意味がわからないですよね。だけど、売っている本人からすると、50円玉を売ることでヒトとのコミュニケーションが生まれるので、そこに価値を見出しているんですね。

 

この話、深くないですか!?

つまり、お金がコミュニケーションツールになっているんです。

 

例えば、僕が10万円のギターを買って弾き語りライブをしようと思ったとします。そういう場合、貯金を崩して買うか、学生の身分であればバイトをしまくって、お金を貯めて買うほうが、話は早いじゃないですか。そこを、あえて、100人から千円を集めてギターを購入する。もちろん、そこには100人から千円を集めるための自分自身の信用や企画のようなものが必要になりますが、そうすることで、たった1人の企画から100人の企画になるわけです。そうすると、僕は100人からの期待に応えるべくギターの練習を一層頑張らないといけないと思うし、弾き語りライブ当日は支援してくれた100人は少なくてもお客さんとして来てくれる可能性が高いですよね (もしかしたら、その100人が、さらに友人知人を連れてきてくれるかもしれない)。このように1人の企画と比べて、100人の企画のほうが、オモシロい結末にたどり着いている可能性が高いわけです

 

この場合のクラウドファンディングは、完全に”資金”を集めることを目的にしていないんですね。ここではお金をコミュニケーションツールとすることで、企画を一緒に盛り上げてくれる”仲間”を集めているんです。いわばお金は“絆の証”になっているんですね。

 

クラウドファンディングは、もっと自由になるべきだ

 

こういう話をすると「自分で集められる金なら、わざわざクラウドファンディングを使うな!」「それぐらいの金額なら自分でなんとかしろ。甘えるな!」みたいな意見があったりすると思いますが、これに関しては家入さんがスゴく良いことを言っていれています。

 

これはつまり、「個人的に必要なお金をクラウドファンディングで集めることは是か否か?」という議論である。これはクラウドファンディングを語るときにいつもついてくる話だ。

 

でも本来は単純な話で、そこに出す価値を見出す人は出すし、見出さない人は出さない。価値観が多様化したことで人がお金を使うときの「向き先」も多様化しているからだ。

 

そもそも、「それくらいなんとかしろ」と思うより、「それくらいだったらみんなで」という発想のほうが楽しいし、優しい

 

得られるリターンは感謝状だけかもしれないけど、それによって人を応援したり、夢を買ったり、単にネタとしてその物語に乗っかったりすることで得られる付加価値は人それぞれ。だから一番理不尽に聞こえたのは、「クラウドファンディングをそんな用途で使うな」という批判だった。じゃあ、どんな用途だったら「正しい」のか?それを決めたのは誰か?クラウドファンディングはもっと自由になるべきだ。

 

書籍『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真 (著) より抜粋

 

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※著者撮影

 

僕も、家入さんの考えに大賛成で、お金を払うという分かりやすい形で、誰かの夢を応援したり、ネタに乗っかることのできる価値って非常に高いと思うんですね。

 

ということで、お金を自力で用意できる手段があったとしても、あえてクラウドファンディングを使うという選択肢をとることに躊躇する必要はないと僕は思っています。

 

企業はクラウドファンディングで何をすべきか?

 

ここでクラウドファンディングに詳しくない方もいらっしゃると思うので、クラウドファンディングで実施できるプロジェクトのタイプについてご説明します。主に以下の2パターンとなります。

 

  1. プロジェクト方式
  2. ファンクラブ方式

 

「プロジェクト方式」とは、単発のプロジェクトに対して、目標金額と募集期間を設定し、その金額の達成を目指して支援者を集めるパターンです。例えば、CAMPFIREの場合、「All-or-Nothing」という募集期間内に目標金額を達成できなかった場合、プロジェクトは不成立となって、支援者からの支援金の決済は行なわれず、プロジェクトオーナーに集まった支援金は支払われないパターンと、「All-In」という目標金額の達成・未達成に関わらず、集まった支援金はプロジェクトオーナーに支払われまるパターンがあります。ただし、「All-In」でプロジェクトを立てる場合は、掲載時にプロジェクトの実施を確約する必要があり、プロジェクトの内容によっては、「All-In」が利用できない場合もあります。

 

また、「ファンクラブ方式」とは、支援者から月額で継続的に支援金をもらえるサブスクリプションモデルの仕組みです。オンラインサロンやファンクラブ限定イベントの実施、限定商品の提供など、ファンクラブで集めた資金の使い方については制限は特になく、プロジェクト方式のクラウドファンディングとも併用可能とのことです。

 

 

ということで、例えば、企業のブランド担当者であれば、どんなプロジェクトができそうか考えてみましょう。

 

プロジェクト方式であれば、例えば、社内会議でボツになった尖ったアイディアをファンと一緒に共創するプロジェクトなんて、僕は面白いんじゃないかと思います。メーカーの場合、流通や小売りを通じて商品を販売する際に様々な制約があったり、そもそも商品企画を決定する際に大きな売上が見込める企画以外は通りづらかったりと、どうしても企業の個性が抑えられた商品が世の中にでていく傾向があると思います。そのためボツになってしまったけれど、そのブランドらしさが詰まっていて、一部のファンには熱く支持されそうな面白いアイディアはクラウドファンディングで資金と仲間を集めて商品を共創し、その"ブランドらしさ"を磨いていくのは面白いと思います。

 

また、上記のような商品づくり以外にも、ファンイベントの実施といったことでも良いと思うんですね。「ファンイベントをやりたいけど、マーケティング予算は広告や販促に使うことが社内で決まっていて、既存のファン向けの施策にお金を割くのが難しいです…」といった悩みを聞くことがよくあります。だったら、クラウドファンディングを使えば良くて、ファンを仲間に変えて、ファンと一緒に作ってしまえばいい。そのほうが、仲間が増えて、企業単独で主催するよりも、断然、盛り上がるのは間違いないです。 

 

パトロンと顧客の違い

 

「自分も一緒にこのブランドを育てているんだ」「自分たちが頑張って、このブランドを大きな存在にしていこう」といった“共同体感覚”を持ってくれる顧客を増やしていくことが、これからの時代のブランドづくりにおいて重要だと僕はよく言うのですが、クラウドファンディングこそ、“支援金を払った・もらった”という最もわかりやすい形で“共同体感覚”を醸成してくれると思います。

 

クラウドファンディングでは、プロジェクトに支援金を提供したヒトのことを”パトロン”と呼びます。パトロンですよ!メディチ家とか、時のローマ教皇とか、そういう存在なわけです。

「コイツの作品をもっと見てみたい!」

「世の中に、コイツの才能や魅力をもっと伝えたい!」

といった想いで彼らは、ダ・ヴィンチだとかを支援していたわけです。

 

自分のために商品やサービスを購入するのは”顧客”です。ここでは、企業にお金が支払われていますが、あくまで顧客自身の生活や楽しみのためのお金のやり取りなので、お金のベクトルは顧客に向いています。

 

“パトロン”の場合は、支援される側や、そのプロジェクトを通じて実現したいビジョンにベクトルが向いていますよね。だけど、パトロン側も、そのプロジェクトに参加することの喜びや、貢献していることの満足感を感じることができ、結果的に幸せになっている。こういうスパイラルが発生しているわけです。

 

このように、クラウドファンディングは、お金を“絆の証”とすることで、ブランドに共感してくれているファンを仲間として迎え入れ、顧客の中でブランドに対する共同体感覚を醸成するのに、非常に向いているということです。

 

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 ※CAMFIREのマイページよりスクリーンショット 。こちらは、キングコング西野さんがプロジェクトオーナーをしている「スナック『キャンディ』ファンクラブ」のプロジェクト詳細ページです。僕はこのプロジェクトを支援しているので、上部にパトロン表示がでています。

 

初めからクラウドファンディングは上手くいかない。まずは”ファン”や”協力者”をつくることから始めよう

 

ただ、ここまでクラウドファンディングの持つ“仲間づくり”の価値を繰り返し主張してきましたが、クラウドファンディングで仲間や価値をつくるには、そもそもブランドの”ファン”や”協力者”といった存在がいないといけません。要は、「仲間になりたい」と思ってくれている人が誰もいない状態で始めても、パトロンたちが集まらず、ブランド価値を高めるプロジェクトの実現が厳しいということですね。

 

そのためには、まずは、ブランドの想いやビジョンを伝え、共感してもらう活動が必要になります。いわゆるエンゲージメントの獲得による”ファンづくり”で、これに一番向いているのは、ソーシャルメディアの活用ですね。なぜなら、TVも観ないし、広告を邪魔なものとしてスルーする生活者が増える中で、FacebookやTwitter、Instagramといった顧客が日々使っているメディアにお邪魔させていただき、生活者とコミュニケーションすることができるからです。もちろん、ブランドのアカウントをフォローして頂くためのキッカケづくりは必要になりますが、生活者とコンスタントかつ長期的に接触できることが、ソーシャルメディアの最大の魅力になります。

 

そして、ブランドのファンになっていただいた方への次のステップとして、有効なのがファンコミュニティです。これまでの企業からの一方方向な情報発信ではなく、企業側と顧客側がフラットな関係でコミュニケーションをとり、コミュニティのミッション(例えば、ブランドの持つ価値を高めるとか、こういう楽しさを世の中に広げたい…など)に対して、お互いが助け合うことで仲間意識が生まれます。コミュニティを通じて、ファンをブランドの価値を高めたり、ブランドの魅力を伝える"協力者"になっていただくことができるわけです。お金という強い絆でつながる仲間の一歩手前の状態ですね。

 

このように、

①ソーシャルメディアを通じた”ファンづくり”

②コミュニティを通じた”協力者づくり”

③クラウドファンディングを通じた”仲間づくり”

という架け橋がつながって、ブランドに対するファンベースマーケティングは完成に近づいていくと僕は確信しています。まとめると、以下の図の形になります。 

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まずは、クラウドファンディングでパトロンになってみよう

 

ということで、今回のブログでは、「ファンベースマーケティングの実践において、企業が、なぜクラウドファンディングを選択肢に入れるべきなのか?」についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?

 

もしかすると、”お金を払うことで生まれる共同体感覚”ということにピンとこなかった方もいるかもしれません。そんな場合は、一度、クラウドファンディングで何かしらのプロジェクトのパトロンになってみることをお勧めします

 

例えば、CAMPFIREでプロジェクト一覧やファンクラブ一覧をのぞいてみてください。プロジェクトの内容だけでなく、プロジェクトを立ち上げているオーナーのプロフィールをチェックすることもおススメです。TwitterやブログなどのURLがリンクでついているので、オーナーの人柄や想いのようなものもわかります。きっと、応援したいと思えるプロジェクトやオーナーに出会えるのではないかと思います。

 

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CAMPFIREよりスクリーンショット 。


最後に、繰り返しになりますが、クラウドファンディングの誠の価値は、「資金」を得ることではなく、「仲間」を得ることです。ファンベースマーケティングの実践を志すマーケターの方は、是非、クラウドファンディングという選択肢を懐刀としてもつことを激しくお奨めしたいです!

 

《参考図書》

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