感動するマーケティング

マーケティングってオモシロいし、世界を感動させることもできる。世の中のアレコレをマーケター観点で切り取ってみるブログ

マーケターは書を捨てハマスタへ出よ!横浜DeNAベイスターズの「超集客術」とは?

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こんにちは!SNS×コミュニティ×PRを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり支援』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 (@kei4ide) でございます。

 

ここ数年、百貨店をはじめ、様々な業界の商業施設から集客が難しいと嘆く声をよく聞くようになりました。ネット上のショッピング機能が充実し、多様なエンタメコンテンツが溢れる現代において、わざわざお店に足を運んでいただくための顧客の来店動機をつくることが厳しいと。

 

そんな集客に悩みを抱えているマーケターは、今すぐハマスタに行ってもらいたい!!

 

なぜなら、横浜ベイスターズをDeNAが2011年に買収してから5年間、プロ野球チームとしては成績が低迷しているにも関わらず、ハマスタにヒトを集めまくっているからです!

※ちなみに、ここ6年間のベイスターズの順位は6位→6位→5位→5位→6位→3位。プロ野球ファンであれば、泣けてくる状態で、やっと昨年から日の目を見せ始めました!

 

買収した2011年と2016年を比較すると、ハマスタの年間観客動員数は1.76倍(110万人⇒194万人)。満員試合数に関しては、2011年はたったの5試合だったのが、2016年には主催試合72試合中54試合が満員です。スゴくないですか!?ちなみに、ベイスターズが日本一になった98年でも満員試合は32回だったそうです。つまり、この5年間で奇跡的な成長を遂げているわけです。

 

「商業施設への集客を成功させるヒントはベイスターズ、そしてハマスタにアリ!」と思い、初代横浜DeNAベイスターズ社長で、2016まで導いた池田純さんの書籍を読み漁ったり、沸騰現場であるハマスタに自ら足を運んでみた結果、そのヒントらしきものを掴むことに成功しました!

様々な成功要因があると思いますが、次の3つが大きなポイントだと僕は思っています。

  • 提供価値を拡張する
  • 戦略ターゲットを定める
  • 共通の価値観を育む

ということで、今回のブログでは、「横浜DeNAベイスターズの超集客術」と題し、上記の3点から商業施設が現代において集客を成功させるためのポイントについて、お話ししていきたいと思います。

 

プロ野球ファン人口は大きく減少。昔と同じやり方は通用しない。 

さて、まず1つ目の「提供価値を拡張する」です。

 

さて、突然ですが、ベイスターズの試合を見にハマスタへ行くことによる顧客への”提供価値”とは何でしょうか?

 

  • プロ野球を生の迫力でみることができる。
  • プロ野球選手たちに会える。
  • 選手たちを直接応援できる。
  • 応援団の中に入って、応援合戦を楽しむ。

 

例えば、こんな回答が思い浮かびますよね。

ただ、これは全部、“熱狂的なプロ野球ファン”じゃないと響かない提供価値なんですね。

 

残念ながら、現在、プロ野球ファンの人口は大きく減ってきています(僕も熱狂的なプロ野球ファンなので、とても悲しいのですが)。調査会社のマクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングが共同で実施した「2016年スポーツマーケティング基礎調査」によると、2006年の12球団のファン人口は、合計4,138万人。同じ調査で2011年のプロ野球ファン人口は3,685万人。直近の2016年は、なんと2,747万人。このように、どんどん減ってきているんです。ちなみに、このファン人口とは、球場に足を運ぶ観客だけではなく、テレビ観戦や、あるいはニュースで試合結果だけを追う形で球団を応援する人も含む広い意味でのファンだそうです。

 

僕は現在33歳ですが、僕らが小学生から高校生の時は、常に巨人戦が全国放送で流れていたり、プロ野球チップスが流行ったり、自分の応援しているチームが負けると翌日機嫌が悪くなる面倒くさい先生がいたりと、日常にプロ野球と触れ合う機会が豊富にあったんですよね。だけど、全国放送から巨人戦が消え、サッカーなどのスポーツだけでなく、多種多様なエンタメコンテンツが溢れる現在、そりゃあ、自然に考えれば、プロ野球ファンの人口は減るはずです。

 

つまり、プロ野球やベイスターズに興味をもってもらい、その流れで球場に足を運んでもらうという昔の考え方で観客を集めようと思っても、効果が見込めなくなってきているということなんです。少なくても、ファン人口が減ってきているので、プロ野球ファンだけを狙った戦略だと、経営数値は伸びていかないわけです。

 

じゃあ、どうすれば良いか? その答えは、熱狂的なプロ野球ファン以外の人達を呼び込むために、ハマスタの提供価値を拡張する必要があるということです。

 

戦略ターゲットは「アクティブ・サラリーマン」

そもそも、提供価値を拡張するには、まず誰を対象に価値を提供するのかという、“戦略ターゲット”を定める必要があります。ここが2つ目の「戦略ターゲットを定める」ということですね。

 

はじめに、ベイスターズのマーケティングチームは、ハマスタの来場者を大きく3つに分類しました。

  • ヘビー層=年10回以上の来場者
  • ミドル層=年4~9回の来場者
  • ライト層=年3回以下の来場者

 

その中で、ライト層で増加傾向があったのが、30~40代の働き盛りの男性だったようで、彼らに対して来場理由を調査してみると、プロ野球を見に来たという回答が当然多いわけですが、それに加えて「“でっかい居酒屋”に行くような気分で、生の野球をつまみにビールと会話と雰囲気を楽しみにきている」という顧客心理が見えてきたそうなんですね。

 

30~40代の男性といえば、仕事終わりに飲みにいったり、土日もアウトドアやスポーツを積極的に楽しんでいる層が多くいます。彼らを「アクティブ・サラリーマン」と名づけ、アクティブ・サラリーマン達にアフター6や休日のアクティビティを選ぶ感覚で、ハマスタを選んでもらい、ハマスタの魅力を知ってもらえれば、きっと平日には会社の同僚、休日には奥さんや子供を連れて来てくれるはず!このような狙いで、戦略ターゲットをアクティブ・サラリーマンに定めたそうです。

 

例えば、試合後にチケットを持っている人なら誰でもグラウンドで遠投を体験できる「オヤジだらけの遠投大会」。野球をやっていた人たちをターゲットにした「夢のプロテスト体験」。他にも、球場の外でビアガーデンを運営して、「食べて勝!B食祭」と称して神奈川のさまざまなB級グルメを集めるイベントを実施するなど、積極的にアクティブ・サラリーマンたちの足をハマスタに向ける施策を次から次へと展開し、「居酒屋ではなく、今日はハマスタに行こう!」といった機運を戦略的に高めていったそうなんですね。

 

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※著者撮影 :ハマスタの外には、ベイスターズの試合の様子がわかる大型スクリーンが併設された屋台やビアガーデンがあって、チケットをもっていなかったとしてもハマスタに向かいたくなる施策が展開されています!

 

ハマスタのエンターテインメントのレベルがヤバい!実際に足を運んで感じたこと。 

僕もアクティブ・サラリーマンを自負していますが、先日、実際にハマスタに足を運んでみて、そのエンターテインメントレベルの高さに衝撃をうけました。

 

現在のハマスタはアクティブ・サラリーマンにとどまらず、アクティブ・サラリーマン達が連れてくる女性社員・彼女・奥さんなどの女性客、また、子供たちやファミリーで楽しめる“総合エンターテインメント施設”にハマスタは成長しています。プロ野球の熱狂的なファンじゃなくても、めちゃくちゃ楽しめる仕掛けが満載なんです!

 

まず、とにかく飯とビールがウマい!

 

特に声を大にして強調したいのが球団オリジナル醸造ビールの『ベイスターズ・ラガー』と『ベイスターズ・エール』の素晴らしさです。「野球観戦にビールはつきものなのだから、最高のビールを提供したい」という想いで、アメリカやドイツを訪問しまくって、「横浜ベイブルーイング」など一流の醸造家たちと組んで仕上がったハマスタでしか飲めない限定ビールです。ロゴのデザインもカッコいいですよね。屋外球場で風が気持ちいいというのも手伝ってか、最高に美味しく感じます。

 

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※Webページ「球団オリジナル醸造ビール | 横浜DeNAベイスターズ」よりスクリーンショット

 

そして、お客さんを飽きさせない工夫がスゴい!

 

例えば、毎回イニングの間には、何かしらの企画が実施されます。『BAYSTARS SUPER BAZOOKA』と呼ばれるスーパーカーがグラウンドに登場&徘徊し、バズーカでプレゼントをスタンドに発射しまくる企画とか、『ズドーン!BIGグローブ』というファン参加型のイベントで、外野に急遽BIGグローブを出現させ選ばれた参加者はBIGグローブ目がけて遠投にチャレンジするという企画があったり。まぁ、とにかくイニング間の企画が次から次にでてくるので、トイレにいく暇がないほどです(笑)

この他にも球場の様々な場所でちょっとしたイベントをやっていたり、フォトスポットが会ったり、展示物があったりとお祭りのような賑わいを作っています。

 

そして、特に見てほしいのが、ヒーローインタビューから勝利の花火までの締めの演出で感動的なんです!

 

ヒーローインタビューを行う際に、球場の照明を暗くするのですが、ファンが持っているペンライトがベイスターズカラーの青で輝き、ハマスタ全体がと美しくて幻想的な空間に変わるんですよ!試合の興奮醒めあらぬ中で、ファンと選手、そしてファン同士の一体感を強めてくれる演出なんです!

 

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※著者撮影

 

また、『Victory Celebration』と呼ばれる勝利後の花火のクオリティがスゴいです。いや、花火というよりショーですね、完全に!ハマスタのグラウンドに花火が設置され、近距離で花火を見るんですが、テンションがあがる音楽やスクリーンの映像に合わせたショーが繰り広げられんです。プロ野球の試合で、ここまでのクオリティの花火ショーを見たことがなかったので、衝撃を受けたと同時にファンを喜ばせようとする姿勢に感動しました。

 


横浜DeNAベイスターズ/3戦連続のVictory Celebration!!/2017.8.24 横浜DeNAベイスターズ×広島東洋カープ うそにゃん 横浜スタジアム

※上記は一般の方の撮影の動画です。

 

このように、ハマスタは、プロ野球ファンが野球観戦を楽しむ場にとどまらず、プロ野球ファンでなくても、「同僚や家族との時間を楽しいものに変える」という価値を提供していて、”提供価値の拡張”に成功していることを身をもって実感しました。

 

一体感を生む演出。横浜愛を目覚めさせる 

そして、重要なポイントとして掲げている最後の3つ目が「共通の価値観を育む」という点です。共通の価値観を育むことで、ベイスターズとファン、またはファン同志の”共同体感覚”を築くということですね。

 

ベイスターズとファンにおける共通の価値観とは何か?

それは、『横浜が好き』ということと、『横浜の街を盛り上げたい』ということです。

 

スポーツチームはもちろん、商業施設を運営するときに「地域から愛される存在になることが大切だ」とよく言われますが、ベイスターズの横浜を愛する姿勢は、見習うべきことが非常に多いです!

 

例えば、選手のビジターユニフォームには親会社である”DeNA”のロゴが入ってないんですよ。「YOKOHAMA」だけなんです!これスゴくないですか!?ユニフォームって、広告スペース価値としては一丁目一番地なんです。そこからあえてロゴを外し、「横浜のチーム」であることをファンに示し、横浜を背負って敵地で戦っているわけです。

 

さらにベイスターズは2016年にハマスタを所有する株式会社横浜スタジアムを友好的TOB(株式公開買付け)しました。要はハマスタを"賃貸"から"持ち家"に変えたんですね。これもベイスターズが「今後も横浜に根付いていく」という強い意志表明の表れなんです。

 

そして、現在、ベイスターズは『I☆YOKOHAMA』(アイラブヨコハマと読みます)というプロジェクトを実行中です。「野球をきっかけに、横浜”を愛するすべての人々を一つにつなげたい」という、壮大なビジョンを掲げています。横浜スタジアム付近のエリアには「I☆YOKOHAMA」フラッグが至る所でたなびき、ハマスタでは、「I☆YOKOHAMA」のBIGフラッグを試合の途中に外野席の観客全員で掲げる演出を行っているんですね。

 

そして、僕が鳥肌が立つくらい感動したのが、試合終了後のヒーローインタビューです。

 

ヒーローインタビューの最後に選手もファンも「I☆YOKOHAMA」のタオルを掲げ、「I☆(LOVE)YOKOHAMA!」と選手もファンも一体となって叫ぶんです。これには本当に感動しました。まさに、ベイスターズを中心に、街と人々が繋がる瞬間を目のあたりにした気分でした。

 

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「DeNA買収から丸5年。低迷期を脱却し生まれ変わったベイスターズの今。| AZrena」よりスクリーンショット 

 

僕の感覚だと、横浜に暮らす人にとっての横浜愛は凄まじいものがあると思います。おそらく日本でも有数の地元愛が強い街なのではないでしょうか。

その横浜で暮らす人たちの中に眠る“横浜愛”を目覚めさせ、横浜愛を共に叫ぶことで、ファンの間に横浜の街や、ベイスターズという球団に対する愛着と帰属意識を深める。まさに、共通の価値観である”横浜愛”を軸に、共同体感覚が醸成されているといっていいでしょう。

 

”強い経営”により、ベイスターズの本当の躍進が始まる

ということで、“横浜DeNAベイスターズの超集客術”と題し、紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?

 

現在、集客に悩みを抱えている方は、ベイスターズに習い、この3つを考え抜いてほしいです。

  • 集客すべき戦略ターゲットを「スケールしそうかどうか?」「彼らが戦略ターゲット以外の顧客を呼んできてくれそうか」という目線を交えながら定める。
  • 戦略ターゲットの顧客心理を洞察し、提供価値を拡張する。
  • 施設と顧客、また顧客同士が共同体感覚を醸成できる“共通の価値観”をつくる。

 

この3つはマーケティングでコントロールできる範囲です。つまり、ベイスターズが負けようが、弱かろうが、ハマスタに足を運びたくなる動機をマーケティングのチカラで創りだしてきているわけです。僕はハマスタの熱気を帯びた雰囲気やハマスタで楽しんでいる人々を見て、「マーケティングのチカラって、やっぱりスゴい…」と改めて感動しました。ヒトの心を動かしたいマーケターの方は、是非、一度ハマスタに足を運んでみてください!

 

そして、最後になりますが、「横浜の街を元気にする」というベイスターズが掲げる公約を果たすには、やっぱりベイスターズのプロ野球における活躍が欠かせません

 

冒頭に紹介したようにハマスタの観客動員数は過去最高になったことをはじめ、球団と球場の一体経営の実現や、売上絶好調のオリジナルビールをはじめとする飲食代やグッズ代などの収入が大きく増えたことから、2011年は年間売上52億円だったのが16年は100億円以上。そして球団単体の利益は2011年が24億円の赤字だったのが、16年はついに5億円の黒字経営に入りました。

 

この“強い経営状態”に成長したことにより、いよいよコア事業であるプロ野球チームの強化施策に資金を回すことができます!選手の練習施設や育成プログラムの充実、評価すべき選手への報酬還元、柔軟な選手の補強施策など、強い経営状態だからこそ実現できることが、沢山あります。

 

きっと、ベイスターズの”強い経営”がチームを活性化させ、近い将来、セ・リーグ優勝、そして、日本一を獲得する日が訪れると僕は思います。

その瞬間、横浜の街が、どんな熱狂の渦を巻き起こすのか、楽しみでなりません!

頑張れ、ベイスターズ!

 

≪参考図書≫

≪参考記事など≫