感動するマーケティング

銀行に熱狂!? 英国銀行『メトロバンク』のチャレンジャー戦略がヤバい

こんにちは!SNS×コミュニティ×PRを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり支援』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 (@kei4ide) でございます。

 

マーケティングについての理解と知識を深めようと、日々、様々な書籍を読み漁っているのですが、「この会社の戦略はスゴい…。チャレンジャー戦略の鏡だ!」と驚愕した海外企業のケースを発見しました。

 

みなさん、イギリスの銀行『メトロバンク(METRO BANK)』をご存知ですか?

 

ロイズ、バークレイズ、ロイヤルバンクなどの大手銀行「ビック5」がひしめくイギリスにおいて、1世紀ぶりに誕生した新銀行で、2010年に開業してから破竹の勢いで急成長。現在、イギリス全土で店舗を展開しており、イギリスで最も活気ある金融サービスブランドと呼ばれているそうです。

 

f:id:kei4ide:20170806133606p:plain

※「メトロバンク」公式サイトよりスクリーンショット

 

まず、何がすごいかって、「Changing the way Britain banks (ばかげた銀行ルールを変える) 」という『メトロバンク』のミッションです。「これまでの銀行は、業界のルールに縛られており、顧客目線になっていない。顧客にとって必要とされる銀行サービスを提供するのが我々メトロバンクである」という、挑戦的かつ刺激的な旗印を掲げています。顧客向けのコーポレートスローガンが『JOIN THE REVOLUTION』ですよ。日本の銀行で、こんな刺激的なスローガン、見たことないですよね。

 

大手銀行の縄張りだった市場に風穴をあけて、急成長しているメトロバンク。大手企業がひしめく業界において、シェアを獲得していきたいチャレンジャー企業やブランドにとって、非常に学びの多いケースだと思いましたので、今回のブログでは、『メトロバンクのチャレンジャー企業としての競争戦略』について紹介させていただきます。

 

顧客を熱狂させるサービス

 

メトロバンクが戦略を立てる上で、目を付けたポイント。それは営業時間が短いこと、そして行員の態度が悪いことなど、多くの生活者が既存の銀行サービスに対して強い不満をいだいていることでした。働いている人や子育てをしている人、長時間通勤をしている人にとって、銀行が平日の午前10時から午後4時までしか空いていないのは非常に不便です。おまけに、銀行の窓口担当者の態度は、お世辞にも愛想がいいとは言えない状況のようで、やたらと横柄な態度をとる銀行員は、イギリスのコメディーの定番キャラクターとなっていたそうです。

 

実際、ロンドンのキャス・ビジネススクールのレポートによれば、イギリスの個人口座の77%、法人口座の85%を占めている大手銀行のビッグ5には、2008~2014年半ばに2100万件の苦情が寄せられたそうです。大手銀行は、やる気のない従業員、不満を抱える顧客、世間からの信頼の低さなど、「長年培われた悪しき文化」の中でもがき苦しんでいて、この文化を一掃するには数十年はかかるだろうとレポートは警告していました。

 

そこで、メトロバンクは大胆にも、祝日で休むのはクリスマスなど年4日だけ。それ以外は年中無休で、営業時間は平日が朝8時から夜8時まで。土曜日は夜6時まで、日曜日は午前11時から午後4時まで店を開くという業界の常識を覆す方針をとったのです。

 

そして、イギリスの銀行というと、対応の遅さと長蛇の列が有名だそうで、口座の開設では、大手銀行だと1週間後の予約しか取れない場合もあるそうですが、メトロバンクでは予約は必要なく15分で口座を開設でき、デビットカードとクレジットカードも即時発行されるとのこと。そして、なんと、そのスピードを活かして、ドライブスルーの店舗まで作っているそうです!これは、スゴい!

 

このようなサービスだけでなく、顧客体験を高めるために、現場のスタッフは陽気なサービス精神を発揮し、笑顔で元気よく顧客を迎えるよう教育されており、イギリスの銀行で初めてペット同伴の来店を歓迎しただけでなく、子供にはキャンディーを、ペットの犬にはビスケットまで配っているそうです。そして、店舗空間も顧客に親しみを感じてもらえるように、店舗は全面ガラス張りの洗練された建物で、店舗の中の様子が分かるようになっています。そしてスタッフのドレスコードは、女性スタッフは赤いドレスに黒のブレザーか、黒いドレスに赤のブレザー。男性スタッフは白いシャツに赤いネクタイのスーツ姿で統一。お固い銀行の印象は全然感じませんよね。

 

▼こちらの動画をご覧いただくと、メトロバンクの目指しているものや、サービスの具体的なイメージをつかんでいただけると思います。


The Metro Bank Journey

 

メトロバンクの店舗内には、「NO STUPID RULE」という書かれたサインが様々なところにありますが、既存の大手銀行の馬鹿げたルールに飽き飽きしていた生活者の心をメトロバンクはガッチリと掴んでいるんですね。 

 

 メトロバンクが選んだトレード・オフ 

でも、ここで考えてほしいのが、ほぼ年中無休で、朝8時から夜8時まで営業するというのは、人件費をはじめ、コストが大きく膨らみますよね。ビッグ5が営業時間を限定してきた最大の要因は、長時間営業を実施することのコストが主な原因でした。

 

では、メトロバンクはどうやって長時間営業を実現したのか? その秘密は、商品設計にあります。メトロバンクは出店先のすべての地域で、預金金利を最低水準に設定していて、これにより浮いた資金を活用して、営業時間の拡大を成し遂げているそうです。つまり、ビッグ5と比べて、メトロバンクに預金しても利息は少なく、預金金利の面では、極めて低水準なサービスしか提供しないかわりに、営業時間の面では飛び抜けたサービスを提供するという選択肢をとっているのです。

 

また、顧客対応の面でも、このようなトレード・オフをとっています。例えば、銀行の現場スタッフとしてベストな人材としては、接客態度と業務処理能力の両面で最高レベルの人材ですよね。だけど、有能で愛想がいいスタッフは、どの企業からも需要が高いので、このようなスタッフを雇おうとすると、採用費で膨大なコストがかかってしまう。

 

そのため、メトロバンクでは、業務処理能力は課題があっても、情熱とコミュニケーション能力に長じた人材を採用することにしました。こうしてフレンドリーで熱心なスタッフをそろえた結果、メトロバンクのスタッフは笑顔で顧客を出迎えて、待ち時間に読むための新聞を手渡し、雨の日は顧客の車の前まで見送るなど、他の銀行と違って、親切で、愛想がよくて、優しいといったポジティブな評判が広がっていったのです。

 

その反面、業務処理能力に長けた人材が手薄になるというマイナス面も発生します。銀行で取り扱うのは、専門性の高い金融商品が多いので、専門知識や技能が乏しければ、顧客に手際よく商品を説明するのは難しいですよね。そこで、メトロバンクでは、取り扱う金融商品の種類を徹底的に絞り込んでいるそうです。従来の銀行業界が重視してきた取扱商品の豊富さという面では、圧倒的に最下位です。しかし、このような思い切った選択をとったからこそ、驚くほどフレンドリーな接客を実現できているわけです。

 

すべてが最高には無理がある。切り捨てる勇気を持つ

マイケル・ポーターの「戦略の本質(1996年)」という有名な論文の中にトレード・オフの重要性が、このように書かれています。

 

“ マネジャーたちは「トレード・オフは解消することが望ましい」という考え方を身につけてきた。しかし、トレード・オフがなければ、持続的優位は獲得できない。 ”

 

“戦略とは、競争においてトレード・オフを作ることなのである。 ”

 

つまり、ビジネスにおいて選択肢があった際に、競合他社が躊躇するような選択肢を勇気をもってとれるか? これかそが競争戦略を策定する上で、欠かせない要素ということです。トレード・オフがないところに、差別化は創れないし、持続的な競争優位も生まれないということですね。

 

ただ、これって言うのは簡単ですが、実際は難しいです…。僕も会社で担当しているサービスのこれからの戦略についてメンバーと話し合うことが多いのですが、やっぱり、サービスを提供する側からすると全ての面で良いサービスを顧客に提供したくなってしまうんですよね。また、どこかの部分で質を落とすことに対する不安もあります。「本当にここを捨ててしまって良いんだろか…。これによって顧客離れが起きないだろうか…。」、 そんな思いに苛まれ、結局、どっちつかずの選択肢をとってしまうことも多いです。

 

しかし、メトロバンクしかり、サウスウエスト航空やザッポスなど、大手企業がひしめく業界に風穴をあけて躍進していると称賛されている企業は、どこかで戦略的にトレード・オフをとっているんですよね。僕の敬愛する「よなよなエール」でお馴染みのヤッホーブルーイングのてんちょ(井手直行社長) もトレード・オフの重要性をセミナーなどでよく語っています。

 

やはり、経営資源の量や、規模の経済ではかなわないチャレンジャー企業は、顧客視点でリーダー企業に対して(もしくは市場に対して)、顧客が抱えている不満やニーズを見出し、リーダー企業が採用したくても選択できない選択肢を勇気をもって実行することが重要だということを、改めて、メトロバンクのストーリーを知って思い知りました。

 

最後に、メトロバンクの共同創業者のバーノン・ヒル氏と、その奥さんであるシャーリー・ヒル氏の言葉を引用して締めくくります。

 

「イギリスの銀行家が同じようなことを始めようと考えたとする。彼は10人の友人を集め、10人のコンサルタントを雇い、なぜやれないのかを示す100の理由を考え出すだろう」

 

「大銀行は我々が何をしているのかを理解している。だが自分たちのビジネスモデルの分析となると、お決まりのROI分析を使うだけで、そのモデルがどのように機能しているかを明らかにできない。状況を打破するには、思い切ってやってみることが大事だ。だからこそ、たいていの物事はこれほど退屈なんだ。誰も思い切ろうとはしないからね」

 

「既存の銀行を見てください。みな同じことをして競争しています。ロイズのテーマカラーは緑、バークレイズは青ですが、扱う金融商品も、支店の営業時間も、何もかも同じなのです。それを競争と呼べるのかもしれませんが、顧客に選択肢があるとは言えません。私たちは選択肢を提示しています。やっていることが違うのです。

 

「メトロバンクは私たちのためではなく、顧客のために存在しています。私たちが行うことのすべては、顧客を喜ばせるためです。メトロバンクのメッセージ、姿勢、文化がそのあらわれです。多くの従業員がよその銀行を訪れ、写真を撮り、私たちに送ってくれます。『ひどいと思いませんか』という言葉とともに。私たちは、他の誰もやらないことをやっている。そう心から信じています

 

う~ん、本当にカッコいい…。こういう熱いビジネスを展開できるようになりたいですね!

 
≪参考図書≫

モノからコトへ。『フジロック』にマーケターが行くべき理由

f:id:kei4ide:20170731212850j:plain

こんにちは!SNS×コミュニティ×PRを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり支援』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 (@kei4ide) でございます。

 

みなさん、毎年、欠かさず楽しみにしている恒例イベントって、ありますか?

 

僕の場合、それはフジロックです!初めて参加したのは2014年だったのですが、その時の体験と衝撃がすごくて、それからは毎年参加するようになりました。今年も参加しまして、興奮覚めやらぬなか、このブログを書いています。

 

ちなみに、フジロックというと、どういう印象がありますか?

 

フジロックに参加する前の僕の印象だと、「音楽好きの玄人向けのフェス」というイメージでした。アーティストのラインナップも渋めの洋楽アーティストが多いし、場所(新潟県の湯沢町苗場スキー場)も遠いし、宿泊も必要だし、チケット代も結構高い(1日券で17000円、3日券で約4万円)。その結果、3日間全部参加しようとすると、宿泊費&交通費含め10万円近くかかってしまう…。そのため、音楽雑誌を愛読していて、タワレコに通うような、音楽にどっぷりハマっている人たち向けのフェスだと思っていたわけです。僕も音楽はもちろん好きですが、「フジロックはちょっと敷居が高いな…」と思って、特に関心をもっていませんでした。

 

しかし、会社の先輩から、「フジロックを楽しむには、別に音楽に詳しくなくても大丈夫!フジロックは”音楽フェス”という枠を超えて、色んな切り口から感動を提供してくれる。人の気持ちを動かすマーケターになりたいのなら、絶対に参加したほうが良い。というか、参加しなさい!」といったようなことをプレゼンされまして、すさまじい熱量に押され参加したのですが、全くその通りでした!

 

ということで、今回のブログでは、フジロッカー歴4年目と熟練フジロッカーズと比べると経験値はまだまだ低いですが、僕なりに「マーケターがフジロックに行くべき理由」を伝えていこうと思います。

 

時代は”モノ消費”から”コト消費”へ

さて、フジロックの話をする前に、マーケティングに起きている潮流の話をさせてください。「モノ消費”から”コト消費”へ」。こんな言葉を新聞やニュースなどで見かけることが多くなってきました。市場が成熟し、生活に必要なモノは、ほとんど手に入っている現代において、人々の関心は「モノ」の所有欲を満たすことから、経験や体験、思い出、人間関係、サービスなどの目に見えない価値である「コト」に移行してきているという話ですね。”物質的な豊かさ”から”ココロの豊かさ”に興味関心が移ってきているという話として、よく使われます。

 

確かに、FacebookやInstagramなどのSNS上の投稿を見ていても、「○○を購入したよ」とか「この●●(商品やブランド名)がおススメ」といったモノ起点の投稿より、「今日、こんな体験をした!」とか「こんな思い出ができました」といったコト起点の投稿のほうが圧倒的に多い印象がありますよね。マーケティングを行う側からすると、機能として満足を与えることはもちろん大事ですが、顧客のココロを満たす(動かす)ことの重要度が増してきているといえるでしょう。

 

どのアーティストが出演するかは二の次。フジロックという空間が好き!

「”モノ消費”から”コト消費”へ」ということを考えたときに、フジロックほど、”コト価値”を創出できている空間は、なかなかないと思います。

 

よく音楽フェスの話になると、「今年は、××(アーティスト名)が、○○のフェスにでるらしいから、○○に行こうぜ」という会話になることが多いですよね。音楽フェスに行く動機として、自分が好きなアーティストが出演するから参加するといった理由が大半を占めていると思います。でも、フジロックは、そうじゃないんですね。もちろん、出演するアーティストも大事ですが、フジロックに参加すること自体に大きな価値を見出している人がとても多いのがフジロックの特徴です。

 

まず、フジロックの魅力を語る上で、苗場の山々に囲まれた景観の素晴らしさは絶対に欠かせません!豊かな森と澄みきった渓流。都会に慣れ親しんでいるものにとって、とても開放的な空間が広がっているんですよね。また、夜の景色も幻想的で心をうたれます。森の中に飾り付けられた沢山のミラーボール。カラフルなイルミネーション・アートで彩られたボードウォーク。昼間とはまた違った魅力を感じることができます。そして、この最高のシチュエーションの中で織りなすライブアクトは、他のライブ会場と比べて別格の味わいをもたらしてくれます。

 

f:id:kei4ide:20170731215723p:plain

 

そして、フジロックの魅力として、よく語れるのが、“ご飯の美味しさ”“会場のクリーンさ”です。「フェス飯」とも呼ばれる屋台での食事は昔から評価が高いようで、日本酒や”もち豚”といった地元・新潟の名産品が数多く出品されているのに加え、ヨーロッパやアフリカなど世界各国の料理が味わえるエリアなど、飲食のこだわりがスゴイ。そして、飲食が充実しているにも関わらず、会場にゴミが少ないんです!フジロックは「世界一クリーンなロックフェス」と世界中で評価されているほどで、来場者にはゴミの回収と分別に協力してもらうように、積極的に働きかけています。

 

また、フジロックの面白い点として、楽しみ方に縛りがないということもあげられるかと思います。フジロックは親子連れでも楽しめるように、会場内にキッズランドと呼ばれる子供が遊べる場所があったり、川遊びもできたりするので、子供たちと夏の思い出を作ることがメインという方もいれば、フジロックの会場を探索することがメインという方もいます。僕の知り合いの一人は、フジロックの空間で飲むビールと食べ物が”おかず”で、音楽は供え物のようなものだと断言していました(笑)

 

「苗場の美しい景色」、「参加者の会場に対するリスペクト」、「食事の美味しさ」、そして、アーティスト達による素晴らしいパフォーマンスが加わることで、フジロックは最高の空間を作り出しています。2016年9月に全世界の音楽フェスティバルを規模、経済効果、影響力、観客動員数から総合的に格付けしたランキング「世界の最重要音楽フェスティバルランキング」というのが発表されたのですが、「フジロック」は、なんと、世界第3位にランクインしているんです!これってスゴくないですか!?ちなみに、日本の他の音楽フェスだと、100以内に「サマーソニック・東京」が74位にランクインされていました。

 

来場者はフジロックの「価値共創者」

そして、僕がフジロックの素晴らしいところを語る上で、特に強調したいのが、来場者の皆さんのマインドです。先ほど、会場にゴミが少ないという旨を書きましたが、これは運営側の努力だけではなくて、来場者側の「フジロックを最高のフェスにしよう」「苗場の自然を大切にしよう」という意識が高いから成り立っていると思うんですよね。

 

「自分のことは自分で」「助け合い・譲り合い」「自然を敬う」

その上で、音楽と自然を自由に楽しみ、出演者、来場者、スタッフの全員で創り上げていくフェスティバル。それがフジロック・フェスティバルです。

 

この言葉は、フジロックを運営するスタッフの方々が、フジロックに参加する来場者に向けたメッセージとして掲げているものです。そして、20年を超える歴史の中で、フジロックを愛してやまないフジロッカーズに、このメッセージは浸透していき、まさに全員で創り上げているフェスティバルになっていると思います。ちなみに、フジロックの会場内にあるボードウォークは地元の人たちと共同でフジロッカーズのボランティアのメンバーで作っているそうで、まさにファンが参加するだけでなく、創り上げる側に回っていると言って良いでしょう。

 

常々思うのですが、”コト価値”を極めるには企業からの一方的な発信だけでなくて、顧客を巻き込んだ価値づくりが重要になってきていると僕は考えています。例えば、ディズニーランドも”夢の国”と呼ばれていますが、運営しているオリエンタルランドやキャストの努力だけでなく、訪れるゲストが、「ディズニーランドで素敵な思い出を作ろう」という想いのもと、“思いやり”をもった行動や、「ディズニーの世界観を楽しもう」という積極的な姿勢が“夢の国”を創りだしていると思うんですね。

 

ディズニーランド、スターバックス、無印良品…などは、顧客との”価値共創”を創りだしているブランドとして、マーケティングに関する書籍やニュースでモデルケース事例として取り上げられることが多いと思うんですが、僕は、その中に、フジロックも入れたほうが良いと本気で思っています。

 

最後に

このように、フジロックは奇跡的な空間を創り上げることに成功しているわけですが、フジロックも初めから今の状態があったわけではないし、今後もこの状態を繋げていくためには新しいチャレンジも必要なわけで、そこにマーケターとしては学ぶことがとても多いと思っています。

 

「顧客を感動させたい!熱狂させたい!」という志のあるマーケターの方は、是非、一回はフジロックに参加して、この空間を肌で体験してもらいたいです。熱狂は苗場にあります!

 

☆フジロックの風を感じることができる素晴らしいオフィシャル動画(こちらは2016年のダイジェストムービ。2017年版が楽しみ!)があるので、是非、見てみてください!

 


20th Anniversary FUJI ROCK FESTIVAL’16 Aftermovie

『乃木坂46』から学ぶ「競争優位を創る源泉」

こんにちは!SNS×コミュニティ×PRを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり支援』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 (@kei4ide) でございます。

 

みなさん、いきなりですが、「乃木坂46」のメンバーの名前を5人以上、言えますか?

 

僕は、一ヶ月前、同じ質問を友人からされましたが、2人しか言えませんでした…。

 

その友人は広告会社に身を置いているのですが、「マーケターとして、世の中を熱狂させているトレンドに対するアンテナが弱すぎる!乃木坂から、ファンマーケティングのありかたをもっと学んだほうが良いよ」と力説されまして、そこまで言われたら調べてみるかと動きはじめて、はや一ヶ月……。

 

個人としても、マーケターとしても、メキメキとハマってしまいました(^O^)

 

f:id:kei4ide:20170812113357j:plain

※著者撮影(約2万円ほどする、神宮ライブのDVD(完全生産限定盤)も購入してしまいました。なかなかのハマりようです!)

ブランドマーケティングの支援を行っていると、「いかに持続的な競争優位を獲得するか?」という話によくなります。様々なブランドがひしめく熾烈な競争環境の中で、自社の商品やサービスが利益をあげ続けるための優位性をどう創っていくのかという話です。

 

アイドル戦国時代と言われる現代において、アイドルグループ界の頂点に登りつめたといわれる乃木坂46…。これは、明らかに乃木坂が競争優位を築くことができているということですよね。

 

ということで、今回のブログでは、個人の主観的な仮説を大量に混ぜながら、「乃木坂46における競争優位の源泉とは何か?」ということと、「マーケターとして乃木坂から学ぶべきことは何か?」について、ファン初心者の身で恐縮ですが、心のままに展開していきます。

 

競争優位を構築するための3つの基盤

さて、乃木坂について論じる前に、競争優位を獲得するために必要な要素を整理したいと思います。競争優位や競争戦略というと、マイケル・ポーター先生が有名ですが、ポーター先生の理論をかみ砕き、”ストーリー”という視点を加えて執筆された『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』という書籍の内容が、非常にわかりやすかったので、引用させていただきます。

 

企業、または、ブランド(商品・サービス)が競争優位を築くための3つのポイントは、以下の3つ。

  1. 業界の競争構造
  2. ポジショニング (Strategic Positioning)
  3. 組織能力 (Organizational Capability)

 

「業界の競争構造」というのは、自社が身を置いている業界が、「もうかりやすい業界なのか?それとも、もうかりにくい業界なのか?」という話です。業界の競争構造を分析する方法としては、ポーター先生のファイブフォース分析が有名ですね。既存同業者との関係、新規参入企業の脅威、代替品の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力…といった5つの視点から、業界内の競争構造を分析するという手法です。

 

「ブルーオーシャン戦略」という言葉にあるように、競合が少なく、外部環境からの圧力も低い、さらに参入障壁も高い最高の業界に身を置けば、それだけで持続的な競争優位が達成できるでしょう。ただ、そんなブルーオーシャンに身を置くことは、ほぼ夢のまた夢で、ほとんどの企業は競争の厳しいレッドオーシャンに身を置いています…。そのため、「業界の競争構造」以外の「ポジショニング」と「組織能力」が非常に重要ポイントになってきます

 

競争を勝ち抜くための本質としては、競合他社と”違い”を創り、“違い”を顧客に評価してもらうことです。書籍の中で紹介されていたレストランの例が、非常に分かりやすいのですが、他のレストランとは違うメニューやレシピを作り”違い”をはかるのが、「ポジショニング」。他のレストランとメニューは一緒だけど、厨房内やホールのオペレーションがすぐれ、競合と比べて質の高いサービスを提供することにより“違い”をはかるのが、「組織能力」です。

 

例えば、セブンイレブンは、コンビニ業界のなかで圧倒的なシェアを得ていますが、他のコンビニと比べて、「ポジショニング」での差は、ほぼないですよね。では、なぜ、ここまでセブンイレブンが強いのかというと、圧倒的に「組織能力」に要因があるわけです。様々な要因があると思われますが、最も重要なものとして語られるのが、「仮説検証型発注」と呼ばれる発注システムです。これは、コンビニの本部に発注を委ねるのではなく、各店舗の店長が地域の特徴をもとに発注内容を決め、本部がそれをサポートし、各店舗にとって最適な発注内容についてPDCAサイクルを回していくというシステムです。現在は、他のコンビニ各社も「仮説検証型発注」を模倣しようと取り組んでいるそうですが、セブンイレブンが、さらに先にいっていて、なかなか追いつけない状態だそうです。

 

セブンイレブンは、「組織能力」で競争優位を創りだしましたが、ベストな選択肢としては、「ポジショニング」と「組織能力」のどちらかを極めるというのではなく、「ポジショニング」で他社との”違い”を明確に創り、そのベクトルに沿って「組織能力」を高めていく掛け合わせができるのが理想です。

 

 乃木坂46における「ポジショニング」

ここから、乃木坂46に話を戻しましょう。乃木坂の場合、当たり前ですが、アイドル業界に身を置くことが前提にあるため、競争優位を築くためのポイント①「業界の競争構造」は期待できません。レッドオーシャンな業界の中で、戦っていくことが前提になります。ということで、②「ポジショニング」と③「組織能力」で競争優位を築いていく必要があるわけです。

 

さて、アイドルグループでポジショニングというと、でんぱ組のように『秋葉原文化との融合』や、BABY METALのような『ヘビメタとの融合』など、強いポジショニングを行うことで差別化をはかることは可能ですが、AKB48の公式ライバルとしてデビューした乃木坂は、秋元康さんがプロデュースで、大多数のメンバーが、センターなどの選抜の座をかけて争う、AKBグループのフォーマットを流用していることもあり、わかりやすい差別化が難しいという制約があります。

 

そんな制約下での乃木坂46のポジショニング。それは総合プロデューサーの秋元康さんがおっしゃっていたのですが、AKB48グループを体育会系だとしたら、乃木坂は女子高の文科系というポジショニングです。元気いっぱい、笑顔全開なアグレッシブな女の子たちが多いアイドルグループの王道のAKBと比べて、乃木坂46はアイドルっぽくない容姿端麗で自分のこだわりを大切にしていそうな女の子たちがアイドルとして頑張っているという印象です。

 

ミュージックビデオなどを見ていても、このポジショニングの差はでていて、例えば、AKBでYoutube上で最も再生回数の高い『Everyday、カチューシャ』のMVは、メンバーが水着で元気いっぱいに踊っていて、いかにもアイドル全開な印象です。それに比べ、乃木坂の夏のヒット曲である『裸足でSummer』のMVを見ると、上智、慶応、青山大学とかにいそうなセンスの良い女子大生たち(完全に主観ですw)が、おしゃれキャンプをして夏を楽しんでいる風景をまとめたような仕上がりになっています。

 


乃木坂46 『裸足でSummer』

 

このポジショニングの良いところは、これまでアイドルに関心が薄い層のファン獲得に成功しているという点です。特に言われているのが、容姿端麗でこだわりを持っているメンバーを意識的に採用した結果、まいやん(白石麻衣)の『Ray』や、なぁちゃん(西野七瀬)の『non‐no』など、多くのメンバーがファッション雑誌の専属モデルとして活動しており、女性からの支持を大きく得ているということです。乃木坂の握手会に行けば全体の2割が女性ファン。また、20万部以上売れた「白石麻衣写真集 パスポート」の購入者の3割は20代女性とのことです。

 

ファンを感動・熱狂させる「組織能力」の源泉 

ということで、独特の「ポジショニング」を築き、新しい層の顧客獲得にすることに成功した乃木坂ですが、これだけで、大きく成功したわけではなく、ポジショニングで定めたベクトルにそって、ファンを感動・熱狂させる「組織能力」が競争優位を築く上で原動力になっているのは間違いありません。

 

組織能力を高める要因としては、「”AKBの公式ライバル”という看板」と「AKB流のチームビルディング」が効いているのではないかと思っています。これは、秋元康さんがプロデュースをしていないと実行できないので、他のアイドルグループでは模倣したくても模倣が難しい要素です。

 

芸能人としてのキャリアも、グループとしての実績も何もない状態で、当時アイドルグループの頂点に君臨しているAKBの公式ライバルとしてデビューをし、SKEやNMB、HKTのように地域からの応援も期待できないなか、「AKBのようにブレイクできるのか?」という疑問符をなげかけながら、活動を続けていくプレッシャーは相当のものがあったと思います。

また、センターや選抜といった場所をメンバー間で競いあわせることで、AKB流のマネジメントにより、グループとしてはもちろん、メンバー各人のパフォーマンスの成長を大きく促したのではないでしょうか(メンバーたち自身は、ものすごく大変だったと思いますが)。そして、グループとして大きく成功した今でも、「AKB流のチームビルディング」によりとどまることなく成長を続けていると思います。

 

その様子は、『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』というドキュメンタリー映画を見ていただくと、よくわかると思います。オトナからプレッシャーをかけられる中、周りと比較されたり、自分と向き合ったり、いろんな想いを抱えながら、戦っているんだなぁと、心の底から感動しました…。(この映画、本当に多くの方に観てもらいたい。)

 


7月10日(金)公開『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』本予告/公式

 

最後に

独自の「ポジショニング」をとりながら、そのベクトルを強化し続ける「組織能力」も高い。乃木坂46が多くの人を熱狂させることができるわけです。もちろん、乃木坂の魅力はこれだけではないのは確かです。例えば、乃木坂は楽曲の素晴らさや、ダンスやライブでのパフォーマンスもそうですし、「NOGIBINGO!」や「乃木坂工事中」などのバラエティー番組での頑張りなど、他にも色んな魅力があると思います。ただ、持続的な競争優位を築けている要因として、この「ポジショニング」と「組織能力」というのは、大きな要因になっていると思います。

 

乃木坂46の躍進を見て、マーケターとして思うことは、しっかりと戦略を持つことの重要性です。『ストーリーとしての競争戦略』に、戦略の本質は「違いをつくって、つなげること」であると書いてありました。

 

「自分が担当しているブランド、商品、サービスと競合との”違い”は何なのか?」

「その”違い”を強化するために、どのような仕組みや組織体制が必要なのか?」

 

熾烈な競争環境が続く中で、ブランドの持続的な競争優位性を創っていくために、この2つを念頭に入れてマーケティングに取り組む大切さを、改めて教えられました! 乃木坂46をあまりキャッチできていないマーケターさん、是非チェックしてみてください。きっと学ぶことが多いと思いますし、応援したくなると思いますよ♪