「タオルで暮らしを豊かにする」。熱狂的なファンをつくる『IKEUCHI ORGANIC』の感動するマーケティングとは?
こんにちは!SNSやコミュニティなどを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 ( @kei4ide ) です。
『ファンづくり』というテーマに関わっていると、よく聞かれる質問がコチラです。
「アパレルだとか、ビール、化粧品、バイクなど、嗜好性の高い商材ならともかく、ウチのような商材で、熱狂的なファンってつくれますかね?」
洗剤やトイレットペーパーといった生活消費財。スナック菓子や飲料水、ジュースといった食品。このような性能や品質に差をつけづらい、いわゆる「低関与商材」と呼ばれる商材を扱っていらっしゃるメーカーの方々から、このような質問をよく投げかけられます。確かに、トイレットペーパーやティッシュペーパーに熱狂している人をイメージするのは、難しいですよね…(汗)
ただ、最近は、「その企業に共感できる哲学と、それを実行している事実があれば、熱狂的なファンはつくれると思います。例え、それがトイレットペーパーでも。」と答えるようになりました。
そのことに気づかせてくれたのが、『IKEUCHI ORGANIC』さんです。
皆さん、『IKEUCHI ORGANIC』という会社をご存知でしょうか?愛媛県今治市に本社を置く、創業64年の会社で、社員数は現在約30名程度。今治といえばタオルが有名ですが、『IKEUCHI ORGANIC』は、「最大限の安全と最小限の環境負荷」をテーマに、原材料から製造工程まで徹底的にこだわり抜いたタオルを製造しています。
失礼な話、これまで僕の中で「タオル」というカテゴリーは完全に低関与でした。確かに肌触りが良いに越したことはないのですが、購入する際に「どこのメーカーのものが良い!」といったこだわりを持ったことはありませんでした。早い話、体を拭ければ基本OKくらいの感覚だったんですね。
そんな僕が、今ではファンの一員になり始めている、いや完全に熱狂的なファンになった『IKEUCHI ORGANIC』。今回の記事では、『IKEUCHI ORGANIC』が多くの熱狂的なファンを獲得している理由を考察しつつ、ファンづくりにおいて重要だと思われる点について学んでいきたいと思います。
『IKEUCHI ORGANIC』さんは本当に「良い会社」なので、少し長いのですが、お付き合いいただけると嬉しいです!
ファンイベントのために、全国各地から自腹で集まるファンの方々
僕が「IKEUCHI ORGANICってスゴイなぁ…」と心底思うようになったキッカケは下の写真のイベントです。
※『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】つくり手と使い手が想いを通わせる場「今治オープンハウス」フォトレポート| 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
こちらは、2017年6月に、IKEUCHI ORGANICの本社がある愛媛県今治市でおこなわれた『今治オープンハウス』というイベントで、工場見学、ファンミーティング、懇親会が1セットになった同社初の試みとなるファンとのMeet-upイベントです。
この時に、全国各地から集ったファンは41名。なんと、みなさん交通費は各自負担して、今治まで駆けつけたそうです!
※『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】つくり手と使い手が想いを通わせる場「今治オープンハウス」フォトレポート| 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
もちろん、『IKEUCHI ORGANIC』の方々も空港までお出迎えに行き、バスへ案内するなど、代表も含め社員総出で、ファンの皆さんをおもてなしするというイベントです。
『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】つくり手と使い手が想いを通わせる場「今治オープンハウス」フォトレポート』という「灯台もと暮らし」さんの記事と、『今治オープンハウス2017 レポート 大盛況の工場見学』という「今治タオルのIKEUCHI ORAGNIC公式ブログ」の記事を読んでいただくと、イベントの熱気と楽しそうな雰囲気が伝わってくると思います。
このイベントレポート記事を読んだ時、ビックリしたんですよね!タオルの会社で、こんな熱狂的なファンイベントが開催できるのか…と。しかも愛媛まで、わざわざ飛行機で飛んでまで参加するなんて、すさまじい熱量だと。
そこから、『IKEUCHI ORGANIC』という会社の魅力とは何なのか?ということを調べ始めたんですよね。
『IKEUCHI ORGANIC』に熱狂する理由とは?
『IKEUCHI ORGANIC』の魅力とは何なのか?様々な角度から考察してみた結果、大きく分けて、品質、姿勢、デザイン、ヒトという4つの要素が魅力の源泉になっていると僕は感じました。
①品質
『IKEUCHI ORGANIC』の魅力として、なんといっても作っているモノの品質の良さというのが第一にあげられます。
※『もしかしたら本当に、このタオルはいつか世界を変えるのかもしれない。【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】企業特集、はじめます。 | 灯台もと暮らし 』よりスクリーンショット
品質に対するこだわりの象徴として非常に印象的なのがコチラ。
赤ちゃんが食べても大丈夫なタオルをつくる。
創業60年の2013年の段階で、赤ちゃんが舐めても安全で、かつ洗濯しても色落ちのしないタオルをつくるため、染色には重金属を含まない反応染料を使用するなど「赤ちゃんが舐めても大丈夫なタオル」を実現できているので、創業120年の2073年までに「赤ちゃんが食べても大丈夫なタオル」を目指すというスローガンを掲げていることです。
「…ん? タオルって食べるものじゃないよね?」
というツッコミが生まれると思うのですが、IKEUCHI ORGANICがつくっている商品の素材は社名の通り全てオーガニック。つまり、有機栽培で育てられたものをつかっています。そこで、「私たちのつくる製品は”食品”である」という考えから、食べても安全なレベルのタオルまで品質を高めるということを全社をあげて目指しているそうなんですね。
※『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】最高のものづくりのために、どんな無茶ぶりにも応えたい|「赤ちゃんが食べられるタオル」の責任者・曽我部健二 | 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
そのため、製造しているのは食べ物ではないですが、食べ物を管理する際のルール(ISO22000)を順守し、工場の中に入る時にはシューズカバーとキャップの着用を義務づけているそうです。
「ここまでやる必要あるのか…?」
そう思われる方もいるかもしれません。ただ、タオルって贈答用のギフトとして購入されることも多いですよね。『IKEUCHI ORGANIC』の商品を選ぶことで、相手に対して、「こんなに大切に思っています」というメッセージを届けることができるので、僕は、やりすぎどころか、「ここまでやってくれて、ありがとう」と思ってしまいました。
品質に対して、圧倒的にこだわりをもっていく。そして更なる可能性を追求していく。この品質の素晴らしさが『IKEUCHI ORAGNIC』の魅力を支えている一番大きな柱なのは間違いありません。
②企業姿勢
2つめに魅力として大きいのが、企業姿勢だと思います。この企業姿勢に共感しているファンが多いのではないかと思います。
※『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】イケウチオーガニックの「風で織るタオル」が気持ちいい理由とは? | 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
『IKEUCHI ORGANIC』の製織工場や本社、直営店で使用される電力の100%は、風力発電でまかなわれています。その結果、ファンの間では『IKEUCHI ORGANIC』のタオルの事を「風で織るタオル」という愛称がついています。
なぜ、風力発電にこだわっているのかというと、タオルの原料であるコットンが「畑の恵みである農作物」なので、気候変動の影響を最小限におさえ、オーガニックコットンを将来にわたって安定的に、かつ収穫量を増加させながらタオルの製造を続けたいという想いからきているそうです。
この「持続可能性」ということを、『IKEUCHI ORGANIC』では非常に大切にしているように思われます。つまり、自分たちだけが良ければOKという考えだけではなくて、原料の仕入れ元となる農家さんや、自分たちの暮らしている地域や社会、自然といったところも、一緒になって豊かになっていくことを目指そうといった理念です。
※『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】イケウチオーガニックの「風で織るタオル」が気持ちいい理由とは? | 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
例えば、『IKEUCHI ORGANIC』では、コットンを生産する農家は、最も信頼性が高いと考えるタンザニアとインドの農家の方々に依頼をしているとのことですが、「フェアトレード」ということを強く意識しているそうです。安全かつ衛生的な労働環境下にあり、正当な生活賃金が支給されており、正当な価格で安定的に購入し続けることがフェアトレードの主な条件になります。
このような生産を行う上での裏側の話って、なかなか消費者心理からすると、価値が伝わりづらかったりするじゃないですか?しかも、このような取り組みを行うことで、商品の価格もどうしても上がってしまうと思うんですね。だけど、環境にも、生産者にも負担をかけず、肌に優しいといった身体的な面だけでなく、心理的にも気持ちよく使えるタオルであるということは間違いなく言えるわけです。
この品質を高めつつ、「持続可能性」もこだわりぬいている姿勢が、ファンの応援したい気持ちを後押ししているのだと思います。
③デザイン
3つ目はデザイン性の高さです。洗練されている。思わず手に取りたくなる。そんなデザイン性の高さが『IKEUCHI ORGANIC』の魅力を大きく高めています。
※【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】デザインは「やって終わり」ではない。ずっと一緒に成長していこう|D&DEPARTMENT ナガオカケンメイ | 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
『 IKEUCHI ORGANIC』という社名&ブランド名は実はまだ歴史は浅くて、2014年に『池内タオル』という社名から、現在の『 IKEUCHI ORGANIC』に変更したそうです。
その際に、ロゴやコーポレートカラーのデザイン、いわゆる「CI(コーポレート アイデンティティ)」を担当したのは、ロングライフデザインを掲げるD&DEPARTMENT代表のナガオカケンメイさんでした。
ナガオカさんは、仕事を引き受ける上で「一生付き合いたいと思うひと・会社かどうか」という視点を非常に重要視しているそうなのですが、『池内タオル』はD&DEPARTMENT創業時の2000年頃ごろからお店で扱っていたこともあり、池内代表とも親しくしている間柄でもあったので、引き受けることにしたそうです。
ロゴやコーポレートカラーを考えるにあたって、改めて本社工場や染色工場を見学したりするうちに、社内会議で「タオル」と「オーガニック」という言葉が頻繁に出てくるんだけど、オーガニックというコンセプトの方が、ブランドとして遥かに勝っているように感じ、「これはタオルってことを言わない方がいい。オーガニックに関する総合ブランドになっていったほうがいいんだろうな」と想い『IKEUCHI ORGANIC』という名前を提案されたとのことです。
CIの色は太陽を。ロゴは地球をイメージしているそうで、『IKEUCHI ORGANIC』は自分たちのためじゃなくて、未来や世界のためにオーガニックを追求している共同体、NPOなんかに近い会社であることを伝えたいとナガオカさんは、「灯台もと暮らし」さんの『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】デザインは「やって終わり」ではない。ずっと一緒に成長していこう|D&DEPARTMENT ナガオカケンメイ | 灯台もと暮らし』という記事の中でおっしゃっていました。
また、ナガオカさんは、『IKEUCHI ORGANIC』の実店舗デザインにも関わっていらっしゃるのですが、店舗の空間設計がメチャクチャ洗練されています!
▼東京の南青山にある『IKEUCHI ORGANIC』の様子 ※著者撮影
▼店内には、手を洗ってタオルの手触りや吸水性を試せるコーナーも ※著者撮影
▼店内は池内代表が大好きなビートルズのBGMが流れ、感銘を受けた書籍の展示などもあり、『IKEUCHI ORGANIC』が大切にしている哲学のようなものを感じることが出来ます。 ※著者撮影
どうですか?『IKEUCHI ORGANIC』のストアは、東京・京都・福岡と3店舗あるのですが、行ってみたくなりませんでしたか? また、デザインという話から少しずれますが、ストアのスタッフの方々のホスピタリティも非常に素晴らしいので、一度ストアに訪問すると、きっと、何度も通いたくなると思います。
このように、CIや店舗設計のデザイン性が非常に洗練されているのですが、もちろん、個々の商品のデザインも優れています。
※著者撮影
こちらは、出産祝いや小さなお子さんがいらっしゃる方へのギフト用の商品なのですが、バリエーションが楽しいですよね!例えば、左上のクマのぬいぐるみのような見た目の商品は、「タオルオリガミ」と呼ばれるもので、フェイスタオルを輪ゴムをつかってクマのカタチに整えているんですね(ちなみに、ここで使われている輪ゴムも哺乳瓶のシリコンゴムと同じ材質ということで、オーガニックへのこだわりがスゴい)。
ただ出産祝いにタオルをわたすだけでなく、こういう遊びゴコロのある商品を提供してくれるところが、『IKEUCHI ORGANIC』のオモシロいところです!
※著者撮影
こちらは「コットンヌーボー」と呼ばれる商品です。「ヌーボー」といえば「ボジョレー・ヌーボー」。ワインのようにタオルを楽しんでほしいという想いから生まれた商品です。コットンは植物なので、毎年、品質が均一であるはずがありません。違いがあってこそ、本当のオーガニック。年によって品質が微妙に違ってきてしまうところを、逆に楽しんでしまおうという発想の転換から生まれた商品です。とても面白いアプローチですよね!
このように、洗練された世界観が中心にありながら、柔軟な発想とオモシロいアイディアで、ファンを魅了するデザイン性の高さ。ここも『IKEUCHI ORGANIC』の大きな魅力になっているのは間違いありません。
④『IKEUCHI ORGANIC』のヒト
品質、企業姿勢、デザイン。この3つで『IKEUCHI ORGANIC』という会社の魅力は十分伝わったのではないかと思いますが、最後に一つ、プラスで付け加えたいのが「ヒト」という要素です。
要は、『IKEUCHI ORGANIC』という会社で働いている方々の魅力です。
僕個人としては、ここが一番大きいと思っています。なぜなら、今の世の中、質が良くて、環境にも配慮していて、デザイン性も高い会社は、それなりに溢れているからです(もちろん『IKEUCHI ORGANIC』ほど、こだわりぬいている企業は、ほとんどいないと思いますが)
その中で、その会社の商品を、何度も何度も買いたくなる強い動機をつくるためには、「この会社の人達を応援したい!、この人達が好きだ!、この人たちと関わっていきたい!」というような、「ヒト」の魅力が、最後の最後は重要になってくると思っています。
そういう意味で、こんなに多くの人が『IKEUCHI ORGANIC』に惹きつけられている理由に、「ヒト」という要素は間違いなく入っているはずです。
※『IKEUCHI ORGANIC 公式Webサイト | イケウチのヒト』よりスクリーンショット
上の写真は、『IKEUCHI ORGANIC』のWebサイトに掲載されている「イケウチのヒト」という記事コンテンツです。是非、読んでみてください。生活の様子、大切にしている価値観、仕事観を変えたエピソード、これからの働き方の展望など、1人1人の記事が、とても手触りがある内容なんですよね。「もっと、この人の話を聞いてみたい。あわよくば、会ってみたい」と読んでいるうちに惹きこまれていきます。
そして、この「イケウチのヒト」をよりパワーアップさせたコンテンツがこちら!
※『【愛媛県今治市・IKEUCHI ORGANIC】タオルを選ぶ「選択肢」をもってほしい──365日肌にふれるタオルだから|神尾武司 | 灯台もと暮らし』よりスクリーンショット
これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」で組まれた『IKEUCHI ORGANIC』特集。全16記事ほどのコンテンツで、『IKEUCHI ORGANIC』の大切にしている価値観や、社員の方々の魅力について掘り下げていく内容になっています。1人1人の社員さんを丁寧に掘り下げているからか、社員の皆さんへの愛着が一層深まる内容となっており、僕の中の熱狂は一気に加速しました!この特集記事は、本当に素晴らしいので多くの人に読んでもらいたいです!
※『今治タオルのIKEUCHI ORAGNIC公式ブログ | 『宇宙兄弟』で起きた社内コミュニティーの活性化』よりスクリーンショット
そして、もう一つ、見ていただきたいのが、上の公式ブログ。『IKEUCHI ORGANIC』の社内の雰囲気を垣間見ることができて、楽しいんですよね(笑)。この「宇宙兄弟」に関する記事とか、めちゃくちゃ面白くて、企画担当者の牟田口さんはもちろん、会社全体で「コラボ企画を楽しんでいこう、盛り上げていこう」という姿勢が伝わるんですよね。
ということで、『IKEUCHI ORGANIC』のヒトの魅力が伝わるコンテンツを紹介していきました。こういうコンテンツを見たうえで、実際の社員の方々とお会いすると、会話も弾むし、応援したい気持ちが増すんですよね。是非、『IKEUCHI ORGANIC』をヒトという軸でも見つめてもらえればと思っています。
まとめ
ということで、『IKEUCHI ORGANIC』が多くの熱狂的なファンを獲得している魅力の源泉を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
前段でも話したように、僕にとってタオルというのは、超低関与商材だったわけです。だけでも、この4つの要素を通じて、『IKEUCHI ORGANIC』という会社に強く惹かれていますし、暮らしにおいてタオルにこだわりを持つことの重要性と楽しさを学ばせてもらいました。
そして、低関与商品と呼ばれるカテゴリーの商材でも、哲学をもって品質にこだわり、共感できる企業姿勢を徹底し、デザイン性を高め、それを生み出しているヒトの魅力を磨いて届ければ、きっと熱狂的なファンを生むことができるのではないかと思うようになりました。それが、ティッシュペーパーだろうが、トイレットペーパーであっても。
もちろん、この4つの要素を満たすのは、一朝一夕でできることではありません。時間をかけて丁寧に育てないと手に入らない要素ばかりです。だけど、その分、競合商品とも大きな差別化ができますし、顧客からも、社会からも、評価される「大切にしたい会社」になれると思うんですよね。
これこそ、まさに「感動するマーケティング」です。『IKEUCHI ORGANIC』のことを知って、『IKEUCHI ORGANIC』のような会社を世の中に増やしていきたいと心から思いました!