感動するマーケティング

『モチベーション革命』から学ぶメンバーのモチベーションデザイン手法【コミュニティ・マーケティングの作法 #02】

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こんにちは!SNSやコミュニティなどを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 ( @kei4ide ) です。

 

「コミュニティを立ち上げたんだけど、メンバーが全然行動してくれない…」

「コミュニティメンバーのモチベーションをキープさせるのが大変すぎて、運営が大変…」

 

といったお悩みを抱えるコミュニティマネージャーの方むけに、先日、『「しくじり」から学ぶ、コミュニティを成功に導く4つの絶対条件』というブログ記事を書かせていただきました。

 

その中で、「コミュニティ活動に時間を割いて、自主的な行動を求めるには、それなりの強いモチベーションが必要になるので、強く共感できる『コミュニティ・ミッション』を掲げよう」というのを絶対条件としてお伝えしましたが、今回は、ここをもう少し掘り下げてみたいと思います。

 

要は、参加メンバーの『モチベーションデザイン』についてです。

 

コミュニティとは、つまるところヒトが集まって、何かしらの活動が起こる場のことをさしますよね。つまり、コミュニティマネージャーたるもの、ヒトが行動を起こすためのガソリンとなるモチベーションについて理解を深め、参加メンバーのモチベーションをデザインしていく必要があるということです。

 

さて、いきなりですが、『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』(尾原 和啓 著)という書籍をご存知でしょうか?

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

 

 ※幻冬舎の箕輪さんのnoteにて「はじめに」が無料公開されています!⇒こちら

 

今年の9月末に発売された書籍なのですが、世代間によりモチベーションの源泉に差があることや、その差をどう埋めていくかなどが非常に分かりやすく書かれていまして、『モチベーションデザイン』について学びになることが豊富に書かれていました(超オススメです!)。

 

今回は、書籍『モチベーション革命』に書かれていた内容を紹介しつつ、参加メンバーのモチベーションをデザインしていくために必要な考え方をシェアしていきたいと思います。

 

幸せには5つの軸がある 

『モチベーション革命』の中で紹介されていて、初めて知ったのですが、アメリカ人心理学者で「ポジティブ心理学」の第一人者でもあるマーティン・セリグマン氏が唱えている「人の幸せは5種類に分けられる」という話をまずは紹介させてください。

 

《マーティン・セリグマンが唱える5つの幸福》

①達成(Achievement)

②快楽(Positive Emotion)

③良好な人間関係(Positive Emotion)

④意味合い(Meaning)

⑤没頭(Engagement)

 

まず、①の「達成」は分かりやすいですよね。与えられた目標をクリアしたり、今までできなかったことを成し遂げたときに感じる幸せのことです。

 

②の「快楽」は、単純に言うとドーパミンを感じる事で、美味しいものを食べたとき、圧倒的に美しいものを見たとき、自分の愛するヒトと抱き合ったときなど、ポジティブな感情が生まれたときに感じる幸せのことです。

 

③の「良好な人間関係」とは、「別に何も達成しなくてもいい。ただ自分の好きな人と笑顔で生きていければいい」といった幸せをさします。地元が大好きで週末のたびにみんなでワイワイ飲み会をするのが好きな人。日ごろからの付き合いを大切にしていて、同窓会に必ず参加する人も、この思想が強いと尾原さんは言います。

 

④の「意味合い」は、自分のやっている仕事が、大きな文脈のなかで誰かに貢献できている。さらに言えば、自分の大切な人のためになっていること。これを実感できることが、「意味合い」タイプの人にとって、幸せの源泉になるということです。

 

そして、最後の⑤「没頭」ですが、これは職人気質の人が感じやすいもので、一つの作業に集中している時や、何かに夢中になって取り組む際に感じる幸せのことです。

 

ここでポイントなのが、この5つを全て満たすのが重要といったことではなく、ヒトによって重要視している軸が違うということです。例えば、③の「良好な人間関係」を職場でも、人生でも重要視している人もいれば、①の「達成」のプライオリティが高く、そのためなら「良好な人間関係」でなくても構わないという人もいるということです。

 

長年、心理学の世界では、「人の幸せはひとつの軸しかない」と言われてきたそうなのですが、ここ数年で、「いや、どうも一つの軸にはまとめられないぞ」ということがわかり、様々な学者が多様な幸せのあり方について定義しているようなんですね。

 

世代間によってズレるモチベーションの源泉

そして、『モチベーション革命』の著者である尾原さんは、世代間によって重要視している幸せの軸に大きなギャップがあると指摘しています。

 

40代以上の世代の多くの人は、「達成」と「快楽」を強く欲する傾向があり、30代以下の世代は、「意味合い」や「良好な人間関係」、「没頭」に強い価値を見出す人が多いという話です。

 

どういうことかというと、40代以上の世代は、汗水垂らして頑張って、高い目標を達成し、その結果のごほうびとして、美味しいものを食べ、高級なバーに行き、きれいな女性と一夜をともにするなどの「身体的・心理的・社会的な快楽」を味わうことが幸せのカタチとして強く求められました。

 

これは別に悪いことでもなんでもなく、日本の経済成長期と重なり、仕事で結果を出せば出すほど、会社も成長するし、社会も発展するというサイクルができていたので、「自分たちがこの国の成長を支えている」「社会を発展させている」といった自負と自信を生み、そうすることが美徳とみなされていました。そのため、仕事にのめり込み、残業して、接待続きで、家庭を犠牲にしても、それが「当たり前」だったんですね。

 

しかし、30代以下の世代において、上の世代と同じように、「達成」や「快楽」を求めるという気概は起こりづらいですよね? なぜなら、既に社会は満たされているからです。モノが豊かに溢れる時代で、様々な便利なサービスが揃っていて、社会基盤も整っている現代において、「ハングリー精神で頑張れ!」とか、「みんなでウン臆円のビジネスを目指そうぜ!」と言われても、いまいちピンとこないわけです。

 

著者の尾原さんは、40代以上の世代のことを『乾いている世代』。30代以下の世代のことを『乾いていない世代』と呼んでいます。上手い表現ですよね。

 

そして、『乾いていない世代』においては、「良好な人間関係」や「意味合い」を重視する人が非常に多いと尾原さんは言います。仕事よりも、個人や友人との時間が大切。何気ない作業のなかにも「今、自分がこの作業をやっている意味」を見出さないと、やる気が起こらなくなる。「没頭」タイプの人も多く、「いくら稼げるか」よりも「仕事に夢中になって時間を忘れてしまった」ということに喜びを感じる人が多いのも特徴とのことです。

 

コミュニティマネージャーは『乾いていない世代』のモチベーションデザインに注力しよう

みなさんにとって、この世代間のモチベーションのズレに対して、どのように感じられたでしょうか?

 

僕は、『乾いている世代』と『乾いていない世代』の話を聞いた時に、とてもしっくりくると同時に、成熟社会が広がり、低成長時代が続く中で、『乾いていない世代』の価値観をもった人たちが、これからマジョリティーになると思いました。

 

つまり、「良好な人間関係」が築けていて、「意味合い」を感じることができ、取り組んでいる活動に「没頭」ができる。そんなコミュニティが、職場であっても、職場外であっても、もっとも人々を惹きつける可能性が高いということです。活動に没頭した結果、「達成感」や「快楽」を感じられたら最高の結末です。

 

このことを踏まえると、コミュニティを立ち上げたり、運用するには、まず「良好な人間関係」を築くこと。そして、そのコミュニティに参加する「意味合い」を与えることに、コミュニティマネージャーは心を砕く必要があります

 

「意味合い」という点では、やはり「コミュニティ・ミッション」を磨いて、メンバーに発信していくことが大切になってきますね。コミュニティ・ミッションとは「こういう社会をつくりたい。こういう人を増やしたい。こういうカルチャーを広めたい。」といった、コミュニティの存在意義のことです。

 

では、「良好な人間関係」を築くためには何が大切か? 大前提として、コミュニティ・ミッションに共感する共通の価値観をもった方を集めるというのが、良好な人間関係を築くにあたってのベースになることは間違いありません。それに、コミュニティマネージャーの愛され力も大切ですね。しかし、「良好な人間関係」を築くには、そこにプラスして、メンバー間のチーム作りが重要になってくると僕は考えていますし、尾原さんもチーム作りの重要性を『モチベーション革命』の中で説いています。

 

チーム作りでまず重要になってくるのは、お互いの相互理解です。お互いがお互いを理解していると、「ここまで指摘してもいいよね」といった信頼関係が出来、コミュニティ内の心理的安心も高まります。尾原さんが紹介していた、自分のトリセツ(取扱い説明書)を書いて共有する方法は、僕は非常に有効だと思いました。

 

例えば、「このコミュニティに入ろうと思った動機につながる、最も古い記憶について」、「自分が120%頑張っちゃうこととは?」、「『これだけはダメ、嫌』という自分の取り扱い注意ポイントについて」といったことをまとめてトリセツ交換会をすることは、とても有効だと思います。

 

また、これも『モチベーション革命』に書いてあるのですが、自分の強みとしていることがわかる「ストレングスファインダー」をメンバーに受けてもらって結果を共有するとか、自分の好きなテーマやジャンルについて掘り下げていく「偏愛マップ」を共有するといったことも面白いと思います。

 

※イケハヤ先生の「ストレングスファインダー」に関する記事が面白いので、興味がある人はご覧ください。

※「偏愛マップ」 について詳しく知りたい人におススメの記事!

 

こういったことを通して「良好な人間関係」を築けると思いますし、お互いの強みを理解し、それに合わせて活動や役割の分担を行ったほうが、メンバーが自分の強みを活かしコミュニティ活動に「没頭」できると思うんですよね。

 

ということで、「良好な人間関係」、「意味合い」、「没頭」といったことにモチベーションの源泉を抱く『乾いていない世代』が増えていく中で、コミュニティマネージャーの方々は、この3つをどう満たしていくのかをコミュニティを運用する上で考えていってほしいと強く思っています。

 

コミュニティこそ『乾いていない世代』にとって求められている。

最後になりますが、これから『乾いていない世代』が増えていくなかで、僕はコミュニティが果たす役割が大きくなるのではないかと考えています。

 

自分の人生の「意味合い」を高められることが職場で出来ればベストですが、『乾いている世代』が経営層を締めることが多い現状では、少なくても今後5~10年くらいは、職場から「意味合い」を見出すのが難しいといわざるを得ない環境に身を置かれる方が、残念ながら少なくないのではないかと思います。

 

そうすると、彼らの「意味合い」を満たす場として、職場でもなく、家庭でもない、第三の場所として、自分と共通の価値観を持っている仲間が集まっている「コミュニティ」というものが提供する価値は少なくないと思いますし、こういう時代だからこそ、「コミュニティ・マーケティング」というものが注目され始めているのではないかと思ってもいます。

 

コミュニティマネージャーは、参加メンバーにとって、「良好な人間関係」、「意味合い」、「没頭」といった生きる上でのモチベーションを与える役割だと思ったら、とても素敵なポジションですよね。

 

色々と大変な役割であるのは間違いなのですが、コミュニティマネージャーを務められている方、これから務める予定の方。一緒に、良いコミュニティを世の中に多く形成できるように頑張っていきましょう!