感動するマーケティング

"ファンづくり"に大切なコト。それは「二段構え」《乃木坂46から学ぶマーケティング》

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こんにちは!SNS×コミュニティ×PRを通じて、様々な企業・団体の『ファンづくり支援』に日々奮闘しております「沸騰ナビゲーター」こと井手 (@kei4ide) でございます。

 

『ファンづくり』というテーマと向き合うに当たり、最近ハッキリとわかってきたことがあります。

 

それは、愛され、応援される企業やブランドになるためには、【二段構え】が必要だということです。

 

最初の【一段目】とは、魅力がわかりやすい技を持つということです。例えば、デザインが良いとか、味が美味しいとか。まず、この一段目がないとファンになっていただくのは難しいでしょう。

 

ただ、この一段目だけだと、熱狂的なファンを育てるのは難しいんですね。なぜなら、デザインが良いもの、味が美味しいものは、世の中にいっぱい溢れているからです。一時的なファンになってはくれても、浮気をする対象が沢山あるので、深い関係までに、なかなか落ちていかないんです。

 

そこで重要なのが【二段目】になるのですが、二段目の技とは全てをさらけ出して共感と信頼を獲得することです。アナ雪の歌詞のごとく、“ありのままの姿”を見せることです。つまり、「どういう不安や悩みを抱えているのか?」、「どういう想いや展望を抱いているのか?」、「今、どんな気持ちでいるのか?」などをプライドや恥じらいを捨てて、キチンと届けるということです。

 

ほとんどの企業は、一段目の技を磨くことには熱心なのですが、二段目の技を磨くことに躊躇しています。なぜなら、“ありのままの姿”を見せることは、勇気がいるからです。恥ずかしいし、弱い部分なんか見せたくないですよね。また、企業の規模が大きくなればなるほど、これまで培ってきたブランドイメージが崩れるとか、広報のガイドラインがキッチリ決まっているとかで、発信できることに厳しい制約がある環境にあったりします。

 

だけど、世の中を見渡した時に、【二段構え】の技をもっている存在こそが、熱狂的なファンを沢山作っているという事実に気づいたんです。

 

そう考えるきっかけをくれたのは、現在アイドル業界で最も勢いがある乃木坂46で、今、人気No1といってもいい『西野七瀬』の存在です。通称、ななせまる、なぁちゃん。僕が乃木坂にドハマりするきっかけとなった存在でもあります。

 

今回のブログでは、僕が西野七瀬を通じて乃木坂46の熱狂的なファンになっていった過程を振り返りつつ、なぜ、この【二段構え】が『ファンづくり』において重要なのかを伝えたいと思います。

とにかく「かわいい」。一段目の技により、なぁちゃんに興味を持ち始める

まずは、僕が乃木坂にハマっていった過程について、お付き合いください。

 

僕が乃木坂46に興味を持ちはじめたのは、今年の6月ごろです。『乃木坂46から学ぶ「競争優位を創る源泉」』というブログ記事の中に書いたのですが、乃木坂ファンの友人から「マーケティングを学ぶものとして、トレンドである乃木坂46にもっと注目しなさい」という熱い推奨がきっかけでした。

 

そこで、テレビ東京の『乃木坂工事中』を見始めところ、バナナマンがMCをしていることもあって、バラエティ番組として普通にオモシロいんです。そこで『乃木坂工事中』を見続けているうちに、めちゃくちゃ可愛いし、空気感も好きだと思えるメンバーがいることに気付いたんですね。それが西野七瀬でした。

 

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「乃木坂46待望の2ndアルバム 「それぞれの椅子」 2016年5月25日(水)リリース!| 乃木坂46 OFFICIAL WEB SITE」よりスクリーンショット 

 

なぁちゃんは、白石麻衣とWセンターを組んだり、単独センターも経験したり、ファンとの握手会でも人気No1だし、女性誌「non-no」でモデルを務めるなど、いわゆる乃木坂の顔です。2016年に発売した写真集『風を着替えて』は、広瀬すずのフォトブックを超えて、年間写真集女王を獲得しています。

 

まさに、【二段構え】の【一段目】ですね。かわいい。空気感が良い。キャラクターが好き。非常にわかりやすい魅力です。

 

だけど、西野七瀬が単なる可愛いだけのアイドルであれば、僕はハマってなかったと思います。なぜなら、見た目が良くて、空気感が素敵なアイドルや女性タレントは、それこそ沢山いるからです。TVはもちろん、ネット動画や、SNS上で可愛い女の子たちが次から次へと登場してくる時代です。

 

しかし、一段目の技にやられて、西野七瀬に興味を持ち始めた僕は、西野七瀬の「これまで」について知りたくなり、色々と検索をし始めたんですね。ここからが真の熱狂の始まりでした…。

 

涙の分だけ成長してきた、なぁちゃん。

乃木坂46は2017年でデビュー5周年。高校2年生の時に乃木坂のオーディションを受けたなぁちゃんも、今は23歳。この約5年間の「西野七瀬の成長物語」が、めちゃくちゃ熱くて、涙なしには見れないんです

 

なぁちゃんは、もともとゲーム好きな内気な女の子で、極度の人見知りで友だちもいなくて、いつも家でゲームばかりしていたとデビュー前の自分を語っています。そんな自分の娘を変えたかったお母さんが乃木坂46のオーディションを薦めたそうで、「アイドルという職業は、自分の性格上、絶対に向いてない…」と思いながらも、「暗い自分を変えたい」という気持ちで応募したとのことです。

 

デビュー当時、TVの企画で、街頭で乃木坂46をPRするためにティッシュ配りをするんですが、通行人に冷たい態度を取られたなぁちゃんは、恐怖のあまりにティッシュを配ることができず、その場で泣き崩れてしまうんですね。バラエティ番組の収録中にも、自分のコメントに不安になって泣いてしまうことが何度もあったりと、自分への自信のなさを隠しきることができない状態でした。

 

そんな弱い自分を変えるエピソードとして有名なのが、4枚目のシングルの選抜メンバー発表です。

 

最前列の常連となった今の西野七瀬からするとオドロキですが、デビューした時のなぁちゃんのポジションは3列目。乃木坂の場合、最前列と2列目のメンバーを『福神』と呼び、福神を目指してメンバーは頑張るわけですが、なぁちゃんは3枚目のシングルで初めて福神に入ることができました。だけど、4枚目のシングルにおいて、それまで親の意向で学業に専念するために活動を休止していた秋元真夏(通称、まなったん)が復帰早々に福神入りすることになり、なぁちゃんは3列目に戻るということが告げられました。

 

この時のショックは相当のものだったようで、号泣しながら母親に「大阪帰る!」と電話したり、まなったんとは、その後1年4カ月もの間、一言も会話をしなかったそうです(スゴいですよね…)。

 

しかし、この一件のおかげで、自分の中に眠る負けず嫌いな一面に気づいたり、「もっと前に出よう」という積極性を意識するようになったりと、なぁちゃんの中で何かが変わったようで、「自分を変えたのは秋元真夏です」と後にインタビューで語っていました。今では、2人はグループを引っ張っていく存在として、とても素敵な関係になっています。

 

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「乃木坂46「気づいたら片想い」特集 - 西野×秋元ガチトーク | 音楽ナタリー」よりスクリーンショット

 

その後、成長していく西野七瀬の姿で特に印象的なのが、マカオタワーからのバンジージャンプです。

 

福神にも復帰し、ついに8枚目のシングルでセンターに選ばれたなぁちゃん。TV番組の企画でシングルのヒットを祈願して「世界一高いバンジージャンプ」と言われているマカオタワーからバンジージャンプをすることに。番組内で、何度も何度も泣いていたなぁちゃんですが、泣きながらも勇気を振り絞って「8枚目シングル、ヒットしますように!」と叫び、マカオタワーから飛び立つ姿は「今まで見たことのない西野七瀬」でした

 

”ありのままの姿”をさらけだして、「共感」を重ねる。

「乃木坂46の歌声、歌詞が誰かにとって大切な曲になったらいいなって思うし、そうやってできる立場にいることって、ありがたいことだし、誇りに思います」 

「それぞれのメンバーがいろんなところで活躍して、そこで力をつけたりして、それを乃木坂46に持って帰ってきて、グループとしてもっと大きくなっていきたいなって思います」

 

こんなコメントを言えるくらい、デビュー当時と比べて、見違えるほど成長した西野七瀬。今でも、基本ネガティブで控えめ目だけど、その分、頑張り屋さんだし、やるときはやってくれます。

 

自分に自信がない…。

前に出るのが怖い…。

自分の想いを表現するのが苦手…。

 

こういう悩みを抱えている人って、世の中に、結構多いんじゃないかなと思います。僕もそうです。なので、なぁちゃんが抱えている悩みって、とても共感できるし、自分ごと化できるんです。

 

そんな西野七瀬が勇気を出して、様々なことに挑戦していく姿に、ファンは勇気をもらえるし、応援したくなるし、成長していく姿を見て「自分もがんばろう」と思えるんですよね。

 

つまり、これが【二段目】なんです。”ありのままの姿”をさらけだして、「共感」を重ねること

 

もし、こういう苦悩や葛藤、悩み苦しむ姿が裏に隠れていて、表にでてくるのは笑顔でアイドル活動を頑張る西野七瀬だけだったら、ここまでの熱狂は絶対に生まれていないと思います。あの泣いてばかりいた頃のなぁちゃんを知っているし、「今でも、悩みを抱えながら頑張ってるんだろうなぁ」と思うから、より応援したくなるんです。

 

そして、こんな具合に西野七瀬を掘り下げていくうちに、乃木坂46の他のメンバーも同様に共感できるストーリーを抱えていることを知り、僕の熱狂はグループ全体に飛び火していきました。初代センターの苦悩と葛藤を抱えた生駒里奈の物語、グループを成長させるために先頭で引っ張ってきた白石麻衣の物語、最年少メンバーとしてアンダーからセンターまで全てを経験してきた齋藤飛鳥の物語…。その全てが熱く、「乃木坂で誰が一番好き?」という質問に対して、気が付くと「好きなメンバーが多すぎて、答えられない…」という状態に変わっていったのでした。まさに、乃木坂の曲にある『気づいたら片思い』状況です。

 

★乃木坂46の各メンバーの物語に興味がある方は、このドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』を見てください。涙なしにみれません…。


7月10日(金)公開『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』本予告/公式

 

”ありのままの姿”をさらけだして、共感を生むのはエンタメだけでない。 

ここまで、アイドルの話をしてきましたが、この【二段構え】というのは、他のエンターテインメントでも一緒だと思います。

 

例えば、ミュージシャンの場合、【一段目】は楽曲のメロディや歌詞のキャッチーさだとか、ビジュアルの良さとかだったりします。だけど、【二段目】であるアーティストのバックボーンとか、考えている人生観、悩みや葛藤など、アーティストの内なる部分にファンが触れ、共感することで、熱狂が生まれると思うんです。

 

僕はMr.Childrenの超絶熱狂的なファンですが、それは楽曲が素晴らしいという事だけではなくて、桜井さんの価値観、生き方に強く共感しているからだと確信しています。ミスチルの曲って、桜井和寿という人間の”ありのままの姿”をぶつけてきている気がするんですよね。人間が持っている明るい部分も、暗い部分も、喜怒哀楽の全てをさらけだしていると思うんです。『しるし』や『HANABI』みたいな無垢で純粋な曲もあれば、『フェイク』や『REM』みたいなドロドロとした欲望や渇きを表現したような曲もあって、「うわぁ~、ここまで言っちゃうんだ…」と思わず唸ってしまいますし、その飾らない姿がカッコいいと思うし、共感できるし、信用もできる。

 

おそらく、皆さんが心から熱狂しているミュージシャンや芸能人、スポーツ選手に対して、「なぜ自分は、そんなにハマっているんだろう?」と考えてみると、きっと同じようなことが言えるのではないでしょうか。はじめのうちは、シンプルに作品や見た目、プレイ姿に惹かれたけど、考え方や価値観に触れて、共感を重ねていくたびに熱狂状況になっていった。そんなことはないですか?

 

だけど、これってエンタメ業界の話だけじゃなくて、メーカーやサービス業といった企業やブランドでも同様だと思うんです。

 

例えば、「Apple」

 

最初は、iPhoneやMacBookといった商品のデザインや機能といった部分で惹かれていくと思うんですが、それだけだと、Apple信者と言われるような熱狂的なファンがこんなに多くは生まれていないだろうと考えています。やっぱりスティーブ・ジョブズが自分の全てをさらけ出して、自分の生い立ちや、製品に対する想い、会社のビジョンについて熱く語ったり、Apple社の挫折と栄光のストーリーを共有しているからこそ、Appleへの熱狂が世界中で起こっていると思うんですね。

 

僕が大好きな、よなよなエールでお馴染みの「ヤッホーブルーイング」もそうなんですよ。

 

ヤッホーさんが美味しいビールを提供したり、面白いファンイベントを開く会社だけであれば、正直、ここまでドハマりしていないと思います。僕がヤッホーさんに対する熱狂度が凄まじく向上したのは、社長である井手さんの書籍『ぷしゅ。よなよなエールがお世話になります』を読んでからなんですね。この本を読んだ人はわかると思いますが、今の超アグレッシブな井手社長からは想像ができないくらい、昔の井手社長は受け身なサラリーマンなんですよ。でも、そんな井手社長が様々なことを経験しながら、成長していって、今のヤッホーを築いていくストーリーが、とても共感できるんですね。そして、「こんな僕でもできたのだから、きっと、あなたにもできる」という巻末のメッセージにグッとくるわけです。

 

モノ消費からヒト消費へ

 

「あるがままの心で生きようと願うから、人はまた傷ついてゆく。

 知らぬ間に築いていた自分らしさの檻の中でもがいているなら、誰だってそう、僕だってそうなんだ。」

 

ご存知、Mr.Childrenの『名もなき詩』の歌詞ですが、やっぱり、”あるがままの姿”をさけだすって、とても勇気がいることだと思うんですよね。

 

でも、飾られた広告や企業都合の情報発信に対する生活者の信用が下がり続けている現代において、【二段構え】で顧客と向き合うことができる企業こそ、ファンを獲得できるし、成長できる企業なのではないかと思います。

 

モノの価値だけで差別化が難しい時代において、「モノ消費からコト消費へ」とよく言われますが、SHOWROOMの代表である前田裕二さんが「モノ消費からヒト消費」の時代になりつつあると書籍でおっしゃっていたのをみて、上手い表現だなと思いましたし、その通りだと思います。

 

もちろん、【一段目】となる商品やサービスを磨くことを怠ってはいけません。だけど、そこにとどまらず【二段目】となる”ありのままの姿”を伝えることを勇気をだして実施する。

 

そして、ありのままの姿を伝えようと思うなら、SNSとかリアルイベントとか、双方向かつ生活者と距離感が近いところで実施していただきたいです。コメントを受け付けない一方的な発信の場でやっていても、顧客から信用されずらいからです。

 

規模が大きい会社でこれをやるのは難しいのは重々承知していますが、是非、検討してみてほしいし、フットワークが軽い会社であれば、【二段構え】を意識的に実行してみてほしいです。

 

きっと、乃木坂46のように、泣き笑いをともにしながら、夢に向かって一緒に進んでくれる熱狂的ファンを育てることができるのではないかと思います!

 

≪超参考図書≫ 

今回、【二段構え】というフレーズを使わせていただきましたが、このフレーズは、自撮りIT女子・ネット文化探究者として、幻冬舎plusで連載を執筆するなど活躍中のりょかちさん(Twitter: @ryokachiiがセミナーの中でお話しされていたフレーズで、りょかちさんの考え方をベースに、自分なりの解釈を織り交ぜて、今回ご紹介しています。

 

ちなみに、りょかちさんの書籍『インカメ越しのネット世界』は、ソーシャルメディア時代における若い世代の考え方を学ぶには、最高の良書ですので、10代~20代向けにプロモーションやマーケティングに取り組むマーケターの方は、絶対に読んだほうがいいです!もちろん、そうじゃない人も読んでもらいたい。自撮り文化や動画共有アプリが盛り上がる背景にある本質など、ユーザー心理を抑えながら、わかりやすく教えてくれます。

 

インカメ越しのネット世界 (幻冬舎plus+)

インカメ越しのネット世界 (幻冬舎plus+)